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馬渕治好氏【強気と弱気が交錯する早春の株式市場の展望は】(1) <相場観特集>


―日経平均は急落後に急反騰、2万円トビ台乱高下の先―

 12日の東京市場は日経平均株価が急騰し、前週末の波乱安を帳消しにしてお釣りがくる戻り足を演じた。なかなか先行きが見通しにくい相場環境にあり、投資家心理も日替わりで楽観と悲観の間を行き来するような状況にある。「節分天井・彼岸底」の相場格言も意識されるなかで、ここから3月に向け日経平均はどういった軌跡を描くのか。強気と弱気が交錯する早春の株式市場の展望、そして足もと円安に傾く為替の動向についてそれぞれの分野の専門家に話を聞いた。

●「世界景気変調で株価も大勢トレンドは下向きに」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 東京株式市場は前週に2万1000円ラインを前に瀬踏みを繰り返し、結局ここを上抜くことができなかった。目先的にはこれが全体相場のトレンド転換を暗示している。全体相場は相変わらずアルゴリズム売買に振り回され、3連休明けの12日は日経平均が先物主導で急反騰したが、大勢的なトレンドが下向きであることに変わりはなさそうだ。結論を先に言えば、日経平均は3月期末にかけ1万7000~1万8000円のゾーンまで水準を切り下げる可能性があるとみている。

 ファンダメンタルズ面では米国を中心にこれから世界経済は悪くなる方向にある。米国経済は年後半にかけてリセッション(景気後退)に陥るとみており、これを相場は年央にかけ前倒しで織り込みに行く展開が想定される。また今は、FRBによる利上げ停止やバランスシートの縮小を中断するとの思惑が、米国株市場ではポジティブに作用しているが、これも過剰に織り込み過ぎといえる。

 実際のところ、FRBは利上げについてはしばらく様子を見るということに過ぎないし、バランスシートの縮小についても見合わせる可能性がある、というレベルであると思われる。したがって、その反動がいずれ顕在化する局面が訪れるだろう。また、米国の銀行もここにきて貸し出しに慎重なスタンスに変わっており、これが結果的に引き締め効果をもたらし、経済を悪くさせる要因となる。

 米中貿易協議についてはこれまでの行き過ぎた期待感が剥落している。直近、トランプ米大統領が貿易協議の期限前に首脳会談を開く可能性を否定したことが、ネガティブサプライズとして受け止められた。これは、トランプ政権内でも対中穏健派と強硬派に分かれており、足もとは強硬派に巻き返しの色が強まっていることを示唆するものだ。

 そしてもう一つ注視すべきは、ここ最近のバルチック海運指数の急落だ。鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶばら積み船の運賃を表す指数で、年初からほぼ一方通行で下落しており、直近は600を下回った。これは世界景気が変調の兆しをみせていることを如実に物語っている。このバルチック指数の動きは株式市場にも早晩反映されることになるだろう。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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