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馬渕治好氏【日経平均一時700円高! 反転上昇は本物か】(1) <相場観特集>


 週明け11日の東京株式市場は前週末の下値模索の地合いから一変、日経平均株価は大幅高で一時700円を超える上昇をみせた。市場の想定を大きく上回る好調な米雇用統計や10日に投開票された参院選では与党が文句なしの勝利を収めたこともあって、一気に買い戻しが進んだ。もっとも、ブレグジット・ショックは依然として尾を引いており、為替の円高進行を背景とした企業業績に対する懸念もくすぶる。不透明な相場環境のなか、果たして今後の東京市場は上下どちらを指向するのか。第一線で活躍するマーケット関係者に意見を聞いた。

●「海外勢にアベノミクス期待再燃」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 週明けの株式市場の大反騰で東京市場の視界は確かに変わった。売り方の買い戻しを加速させた背景は、いうまでもなく6月の米雇用統計と参院選での与党の大勝だ。まず、米雇用統計では非農業部門の雇用者数が市場予測を大幅に上回った。英国EU離脱に伴う欧州経済の停滞リスクは不可避としても、米国の内需の強さに変化がないことが確認されたことは大きな材料で、米国株市場の先高期待が膨らんだ。これは東京市場にとってももちろんプラスに作用する。

 一方、10日に投開票された参院選は自民・公明の与党の圧勝といってよい結果だった。これで安倍首相は再びリーダーシップを発揮しやすくなった。少なくとも海外投資家はそう考えたはずだ。11日の大幅高の原動力は海外勢の買いと思われるが、単に積み上げた売り玉のショートカバーだけではない。後場に見られた内需株への攻勢は実需の買い乗せも結構なウエートを占めていたと思われる。

 取引時間中に、安倍首相は4年ぶりとなる建設国債の発行を検討する構えにあるとマスコミを通じて伝わった。その規模には具体的に触れていないようだが、結果的に10兆円を超えてくる可能性は高く、補正予算に対する期待を醸成し、為替の円安と歩調を合わせてリスクオフの巻き戻しが一気に進んだ背景となった。日経平均は9月までに1万8000円台を視界に入れてくる可能性は十分にあるとみている。当面の下値については1万5400円台が下限ラインだろう。

 個別銘柄としては、補正予算編成に焦点を当てた内需株という点では建設株に目が向くところだが、現在の株価の位置を考慮するとゼネコンなどにそれほど上値妙味が大きいとはいえない。むしろ、新日鉄住金 <5401> をはじめ売り込まれた鉄鋼株や太平洋セメント <5233> などのセメント株建設資材関連の切り口でチャンスが回ってくる可能性がある。コマツ <6301> や古河機械金属 <5715> など大底圏の建設機械株も狙い目だろう。

 このほか、為替動向次第の部分もあるが、トヨタ自動車 <7203> 、ホンダ <7267> などの自動車株はリバウンド期待が大きい。ドル円相場は今後1ドル=110円台を目指す円安局面を想定している。また、今回の株高の足場となった米国景気の強さを収益機会に反映させやすいのは、自動車株であることも忘れてはならない。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程終了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「勝率9割の投資セオリーは存在するか」(東洋経済新報社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。


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