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【材料】ブイキューブ(取材メモ)---業績は第1四半期で最悪期を通過した公算、押し目買いの局面に

ブイキューブ <日足> 「株探」多機能チャートより

一過性要因中心に第2四半期は大幅減益も、修正数値からは上振れ

ブイキューブ<3681>は8月10日、2016年12月期の第2四半期(16年1-6月)決算を発表。売上高は前年同期比25.8%増の33.97億円、営業利益は同98.0%減の0.03億円、経常損益は同6.12億円悪化の4.12億円の赤字、四半期純損益は同4.88億円悪化の4.20億円の赤字だった。

7月1日に発表した下方修正値(売上高は36.44億円から34.05億円、営業損益は1.48億円の黒字から0.34億円の赤字、経常損益は1.05億円の黒字から4.39億円の赤字)と比較すると、利益の各項目は上振れる形になっている。営業損益は赤字予想に対して、売上原価、一般管理費が想定よりも減少したことで、一転して黒字を確保した。

期初予想比での営業利益下方修正の要因は、オンプレミス売上の未達、教育関連の外注費・仕入増、中国の教育関連の課金開始遅延、エムキューブの売上未達など。また、営業外では円高による外貨建貸付金の評価損が3.85億円発生し、経常損益の下振れ幅が大きくなった。

一方、前年同期比で減益となった要因は、円高の影響(人民元19.32→17.08、シンガポールドル89.08→80.92、ドル120.24→111.85)が大きかったほか、利幅の大きい中国クラウド売上の減少、オンプレミス売上の減少、継続的な開発投資による償却費の増加など。なお、もともと第2四半期は期初予想から前年同期比24%減益を見込んでいた。

第2四半期をボトムに収益は回復基調へ

業績伸び悩みなども映して、2016年3月高値から現在の株価は半値以下の水準となってしまっている。ただ、最悪期は通過しているものとみられ、足元で下げ止まりつつある現在の株価水準は押し目買いの好機とも捉えることが出来よう。第2四半期のみ(4-6月期)の営業損益は1.06億円の黒字であり、第1四半期(1-3月期)の1.03億円の赤字からは収益が改善している。2016年12月期通期では、営業利益は2ケタ増益を計画しており、第1四半期で業績はボトムを打ったものと判断される。

2016年12月通期については、売上高が前期比34.8%増の82.00億円、営業利益が同27.6%増の4.44億円、経常利益が同95.6%減の0.07億円、当期純損益が同2.76億円悪化の1.83億円の赤字としており、7月1日に発表した修正予想を据え置いている。主力分野のクラウドは日本やシンガポールを中心に堅調な成長が見込まれる。また、オンプレミスは国内金融分野とタイでの成長を見込み、売上予想は期初計画と比較して上方修正している。アプライアンスは第3四半期集中の電子黒板の拡大とともに、15年末から手掛けているテレビ会議システム「V-CUBE BOX」の販売台数増加を見込んでいる。

もともと、2016年第2四半期でも、主力の国内売上はクラウドの成長がけん引して、前年同期比17%と2ケタ成長、収益悪化も一過性要因が中心であり、成長自体は継続する状況にあるといえる。なお、中国での教育関連の課金開始は慎重に2017年12月期にずれ込むと想定しているが、これが早まれば業績の上振れ要因にもなってくる。

中期的な成長分野を数多く抱える

足元の株価の伸び悩みに関しては、マザーズ市況など新興市場の低迷も一因と捉えられる。ブイキューブは成長性期待の高い中小型内需株との位置づけであるほか、テーマ性が極めて豊富であるため、個人投資家の投資マインドに左右されやすい面も多分にある。主力大型株の上昇一服、決算発表の通過などから、目先は中小型株への物色シフトも想定され、株価には追い風となっていこう。以下、ブイキューブの中期的な成長分野を掲げる。

各種の規制緩和・規制強化・国策がビジュアルコミュニケーションの利用シーンを拡大させていくと予想される。国策としては、地方創生、一億総活躍社会の実現、テレワークなど働き方の多様化、規制緩和としては、教育分野における高校遠隔教育解禁、公設民営学校、校務情報化、ICT 教育の普及、医療分野における遠隔医療の解禁、特区でのオンラインによる薬の処方許可、メンタルヘルスの義務化、金融分野における金融自由化、ドローン規制施行、航空法改正、電波法改正などが追い風となりそうだ。

教育分野では、教育のICT 化、遠隔教育、研修オンライン化、e ラーニングなどをカバーする。2020 年における各市場規模は、電子黒板を中心としたアクティブラーニングが120 億円、学校における遠隔教育/e ラーニングが533 億円、校務情報化/ 学務支援システムが185 億円、教育産業市場(学習塾、通信教育等) における活用が1,730 億円と予想されている。また、将来のインドの教育市場での展開の布石として、子会社アイスタディがインドで教育プラットフォームを提供する企業と業務提携を行い、インド市場での事業展開を開始している。

医療分野はエムスリー<2413>との合弁会社のエムキューブが主に担うが、同分野においてもビジュアルコミュニケーションの需要は拡大が見込まれている。具体的には製薬業界のマーケティングに加えて遠隔医療、遠隔介護、遠隔処方などで市場獲得の可能性が高い。

金融分野では、具体的には、主要金融機関におけるオムニチャネル化(遠隔窓口業務、資産運用相談、相続相談、外交員支援、遠隔セミナーによる商品紹介、遠隔営業等)だが、遠隔金銭消費貸借契約(要するにローン契約) などのフィンテック分野でも活用される可能性が高いと考えられる。

ドローンを中心としたロボティクスも重点分野。業務用ドローン関連の市場は、地方自治体における災害対策、警察、消防での利用、橋梁やダムなどのインフラ点検、工場・大規模施設のメンテナンスなどを含めて将来的には1,000億円に達すると予想されている。既にブイキューブロボティクス・ジャパンを設立し、クラウド型ドローンによる遠隔監視ソリューションを展開しており、2018 年から本格的に立ち上がることが期待されている。現状では、災害対策など地方自治体でのニーズが高まってきている印象のようだ。

《YF》

 提供:フィスコ

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