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【特集】植木靖男氏【流れ変わるか、政策期待の6月相場】(3) <相場観特集>

植木靖男氏(株式評論家)

 伊勢志摩サミットという重要な政治スケジュールを通過し、足もとは円安進行が強い味方となって日経平均株価は1万7000円大台回復を果たした。「セル・イン・メイ」が警戒された5月相場だったが、振り返れば大型連休中の急落から順調な立ち直りをみせ、3カ月連続となる月足陽線が濃厚となった。では、7月の参院選を前に政策期待が盛り上がりそうな6月相場はどうなるか。第一線で活躍する市場関係者に話を聞いた。

●「商い低調で楽観できず、米国株と円安一巡を警戒」

植木靖男氏(株式評論家)

 伊勢志摩サミットでは財政政策の重要性に言及したかたちでG7首脳宣言を採択し、株式市場も本来であれば政策期待相場の流れが形成されるところだ。日経平均は円安が進行したこともあって上値追い指向が続いている。ただ、消費増税延期の方向については前週末ザラ場の段階でマーケットは認知していたはずなのに、反応の薄さが際立ち、売買代金は今年最低水準を連日記録する低調ぶりをみせている。海外投資家が日本株に興味を失っており、全体商いは増税延期を織り込んだうえでこの体たらくである。むしろ、増税が延期されれば駆け込み需要がなくなる分、今後は凪の状態で消費者のデフレマインドが続くことになり、マイナスに働きかねない。

 なぜ、ここまで相場のボリュームが低下してしまったのか。日本株市場が当面厳しい環境下にあることを示唆する理由は2つある。

 まず、米国株の頭打ち感だ。NYダウは昨年5月に1万8300ドル台で天井をつけ、今年4月に1万8100ドル手前で二番天井をつけた。6月利上げ思惑と合わせて年内2回の金融引き締めがあるとの見方も浮上するなか、“逆金融相場”の色を見せ始めている。米国株の中期トレンドが下向きであれば、当然、日本株にも下方圧力が働くことになる。

 また、ドル円相場は足もとこそ円安に振れているが、1ドル=111円近辺ではドル買い円売りの動きが一服しそうな気配もある。米利上げが年内2回とすれば、100円を切るような急激な円高は回避されたといってよいが、とはいえ115円を通過点に120円を目指すような円安も考えにくい。既に円安の限界ラインは近づいていると思う。

 期待されるとすれば、6月16日の日銀の金融政策決定会合だろう。ここで追加緩和される可能性はそれなりにあり、実施されれば日米金利差拡大を背景とした円安と合わせ株式市場には浮揚力が働きそうだ。ただ、その場合も上値はそれほど大きくはないだろう。

 ここからの日経平均の上値余地は限定的とみているが、6月は日米の金融政策に対する思惑から、株価の値動きそのものは上下にボラティティーが高まる公算が大きく、その点は注意が必要だ。そのなか個別に何を拾っていくかだが、やはり国策に沿う銘柄に安定感がある。補正予算編成への期待やリニア延伸前倒しなどを材料に大成建設 <1801> 、大林組 <1802> をはじめとしたゼネコン。構造物補修のショーボンドホールディングス <1414> に注目。また、フィンテック関連では富士通 <6702> をマークしたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(うえき・やすお)
慶応義塾大学経済学部卒。日興証券(現SMBC日興証券)入社。情報部を経て株式本部スポークスマン。独立後、株式評論家としてテレビ、ラジオ、週刊誌さらに講演会などで活躍。的確な相場見通しと独自の銘柄観に定評がある。

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