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【特集】ランドセル販売、前倒しの「なぜ?」<直撃Q&A>

東善広氏(高島屋 MD本部子供・情報&ホビーディビジョン課長)

 2017年度春の新1年生に向けたランドセル商戦が早くもスタートした。商戦の口火を切った高島屋 <8233> では、今年度の入学式が始まる前の4月1日、昨年より2ヵ月以上も前倒ししてランドセル売り場の展開を開始した。もちろん、百貨店だけでなく、スーパーなど大手小売り業界を見渡しても異例の早さといえる。そこで、ランドセルの販売開始時期を早めた狙いや今年のランドセルの商品傾向について、高島屋MD本部子供・情報&ホビーディビジョン課長でバイヤーの東善広氏に話を聞いた。

●東善広氏(高島屋 MD本部子供・情報&ホビーディビジョン課長)

Q1 なぜ、ランドセルの販売開始時期を4月に早めたのでしょうか

 昨年は6月15日からランドセルの店頭での販売を開始しましたが、今年は4月1日に開始しました。ここ数年、1ヵ月ずつほど販売開始の時期を早める傾向があったのですが、今年は一気に2ヵ月以上早めたことになります。

 これは3世代の集客によるランドセル需要を取り込みたいという狙いからです。もともとランドセルの需要の山場というのはおじいちゃん、おばあちゃんの家に孫が遊びに来る夏休みでした。しかし、ゴールデンウイーク(GW)も同様に3世代の集客ができるので、このGWの山場の需要も取り込もうというのが狙いです。昨年は8月末まででランドセル全体の5割くらいを販売しましたが、今年は6割くらいを販売したいと考えています。

 ランドセルというのは季節商品ですが、早めに売り場展開することで子供服売り場の核になるようにし、「ランドセルならまず高島屋」と言っていただけるようにするのが目標です。

Q2 その他の狙いはありますか?

 インターネットと実店舗を融合させるオムニチャネルの強化とインバウンド需要の取り込みです。昨年も4月1日にサイトではランドセルの販売を開始していましたが、反応は期待していたほどではありませんでした。やはりランドセルという商品の特性から、まず情報を集めて、下見をして実際に子供に背負わせて、そしてご両親やおじいちゃん、おばあちゃんと買いに来るという傾向があります。サイトで販売を開始しても店頭に商品はまだなかったので、集客につながらなかったという反省から、今年はサイトと店頭で同時に販売を始めました。

 また、インバウンド需要の取り込みでは、最近はファッションアイテムとしてだけではなく、実用としてランドセルを使用する人が世界的に増えているということが背景にあります。中国からのお客様の「爆買い」がよく話題になりますが、今年は販売開始時期を早めたことで、4月初旬の中国の清明節の祝日による需要も取り込み、販売件数がおよそ倍になりました。注目したいのは単価で、昨年はこの時期というのは特価品を販売していたのですが、今年は単価もおよそ倍になっていて、インバウンドに関してはまずは良いスタートが切れたのではないかと考えています。

Q3 今年ならではの商品の傾向はありますか?

 単年ごとの流れということではありませんが、昨年くらいから「安心・安全・国産」がポイントとなってきています。当社でも以前から「安心・安全をいちばんに」を掲げていますが、当社のこだわりがみなさんに広まったという感触を得ています。

 当社の商品でいうと、オリジナル商品に関してはランドセルのかぶせの横とベルトの前に反射材を標準装備した商品を展開してきましたが、昨年からはかぶせを縁取るように反射材をつけた「安ピカッ」という商品を提案しています。おかげさまで好評をいただいていて、一昨年まではランドセル売り上げに占めるオリジナル商品の割合は5割に届きませんでしたが、昨年は「安ピカッ」の貢献で5割強となり、初めてオリジナル商品と非オリジナル商品の割合が逆転しました。今年はさらにデザイン性を追求した商品を展開しています。

 また、「本物志向」ということも最近のポイントだと思います。やはり6年間使うものなので、しっかりとした天然皮革のものが欲しいというお客さまの声をよく聞きます。たとえば昨年から牛革の製品を強化したのですが、それまで全体の3%くらいだったものが7%に一気に増えましたので、潜在的な需要は大きいのだと思います。

Q4 他の百貨店もランドセルの販売開始を早めていると聞きます

 商品力で差別化を図ろうと考えています。たとえば、「安ピカッ」は「フィットちゃん」ランドセルを製造しているメーカーのハシモト(富山県富山市)が特許出願中のものを高島屋デザインで作っていただいているものなので、他社には真似できない強みだと思います。また、「天使のはね」で有名なセイバン(兵庫県たつの市)の商品でも、現在主流となっているA4フラットファイルサイズで高島屋のデザインで作っていただいているので、A4フラットファイルサイズで、「天使のはね」仕様で、さらに他とは少し変わったものを探すとなると、当社の商品しかありません。他の全国流通のメーカーの商品でも高島屋だけのカラーやデザインを用意しているのが、当社の強みです。

(聞き手・浅野尚仁)

<プロフィール>(あずま・よしひろ)
1990年入社。大阪店特選洋食器売場に配属。94年同店統括担当職、99年同店家具売場セールスマネジャー職を経て2004年からMD本部バイヤー職(現職)。


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