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【特集】「爆買い」から「爆体験」へ、インバウンド“大変化”を追う <株探トップ特集>

HIS <日足> 「株探」多機能チャートより

―日本旅行は「モノ」から「コト」へ、新潮流に乗る銘柄は?―

 日本経済活性化の目玉の一つであるインバウンド(訪日外国人)消費。安倍晋三内閣の発足から約3年。戦略的なビザ緩和や、免税制度の拡充、出入国管理体制の充実、航空ネットワークの拡大など、さまざまな「改革」に取り組み、訪日外国人旅行者数は2倍以上の約2000万人に達し、その消費額も3倍以上になるなど大きな成果をあげた。

 特に、中国人旅行者による「爆買い」は2015年のユーキャン新語・流行語大賞にもなり、いまや知らない人はいないワードになったが、その中身には変化が起こっているという。

●中国人観光客の旅行支出は減少傾向

 4月20日に観光庁が発表した訪日外国人消費動向調査によると、1-3月期の訪日外国人旅行消費額は9305億円で、前年同期に比べて31.7%増加した。一方、1人当たりの旅行支出は16万1746円で同5.4%減少。特に、中国からの訪日客は26万4997円で同11.8%の減少となっている。

 為替レートが人民元安・円高へ振れた要因はもちろん大きいが、「引き続き中国人観光客による売り上げは好調だが、以前のように高級バッグをたくさん買われるということは少なくなった」(百貨店関係者)という声も聞かれる。

 以前のように、親戚や友人に頼まれた土産を一度に大量購入する動きから、自分が買いたい物をじっくり選んで購入する人が増えているのが要因という。また、「以前は中国人観光客といえば炊飯器だったが、最近は美容家電などが売れている」(大手家電量販店)といった声もあり、何度も日本に来ている中国人観光客が高額な土産を大量に買い込むのではなく、消耗品や買い物以外におカネを使うようになっていることも背景にあるようだ。

●羽田空港から競馬場に直行する観光客が増加

 こうしたなか、注目されているのが、「爆買い」に代表される「モノ」から、日本でしか体験できない「コト」への消費の移り変わりだ。

 エイチ・アイ・エス <9603> では「ロボットレストラン体験」や、「ラーメン作り体験」「侍トレーニング」「ロリータコスプレ体験」などのユニークな体験ツアーが人気だという。これを受け、シダックス <4837> [JQ]では中国人客らに茶道や華道、剣道を教える体験サービスを始める予定で、国内外の旅行会社に働きかけている。

 日本中央競馬会(JRA)でも昨年11月、東京競馬場(東京都府中市)で中国人観光客を招いた競馬体験イベントを実施し好評だった。中国にはギャンブルに対して厳しい規制があり、競馬にはなじみが薄い。東京都競馬 <9672> の大井競馬場では、中国人観光客専用のサロンを開設しており、最近では羽田空港から大井競馬場へ直接訪れる中国人観光客も多いという。

 また、リクルートホールディングス <6098> が昨年12月に発表した「2016年のトレンド予測」でも美容室やネイルサロンなど街の美容サロンを利用する訪日外国人女性が増加していることが指摘されている。中国系投資ファンド「剣豪集団」は昨年6月に美容室「モッズ・ヘア」を展開するエム・エイチ・グループ <9439> [JQ]を買収したが、こうした動きを見越しての動きといえよう。

●温泉とセットの医療ツーリズムも人気

 体験で多いのががん検診や人間ドックなどの医療ツーリズムだ。医療分野のインバウンドに関する具体的な統計はないが、温泉とセットになったものの人気が高いという。訪日治療を望む海外患者向け「国際医療コーディネートサービス」を手掛ける日本エマージェンシーアシスタンス <6063> [JQ]や、香港を拠点に医療ツーリズムのマーケティングを展開するシンワアートオークション <2437> [JQ]などが注目されよう。

 さらに、こうした訪日外国人客の行動パターンをビッグデータを駆使して解析するホットリンク <3680> [東証M]や、訪日外国人がどこを訪れているかを分析する企業をNTTドコモ <9437> と共同で運営するインテージホールディングス <4326> なども関連銘柄といえそうだ。


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