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【特集】田部井美彦氏【日米欧・金融会合後のマーケット!】(3) <相場観特集>

田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)

 欧州中央銀行(ECB)は10日、マイナス金利の拡大と量的緩和策を合わせて実施した。ECBドラギ総裁による利下げ打ち止め示唆発言を受けて、東京株式市場は朝方売り優勢となったものの、予想を上回る追加緩和策への評価が徐々に広がるにつれ、日経平均株価は後場に入って前日比プラス圏へと切り返した。来週前半に相次いで開催される日米の金融政策会合に投資家の関心が集中している。そこで、第一線の市場関係者に、日米欧の金融政策会合後の相場見通しを聞いた。

●「円高進行を警戒も3月下旬から戻り試す展開へ」

田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)

 ECBのドラギ総裁が理事会後の記者会見で、今後の追加利下げについて否定的な発言をしたことから、これを嫌気して10日の欧米株式市場は下げに転じた。ただ、これは量的緩和の余地は残されているとも解釈でき、11日の日経平均株価が後場から前日比プラス圏に浮上することにもつながった。

 14~15日に開催される日銀の金融政策決定会合は、「現状維持」となる可能性が高い。もし、何らかの追加緩和策の実施があるとすれば、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の買い入れ枠の増額といったところだろう。マイナス金利は2月16日から導入されたばかりで、マイナス金利幅の拡大などは難しそうだ。

 金融政策決定会合の結果が「現状維持」や小規模な追加緩和の場合、市場の反応は軽度な失望となりそうで、とくに外国為替市場では円高が進行する可能性が高い。15~16日に予定される米連邦公開市場委員会(FOMC)で、今回は利上げが見送られることになりそうだ。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)は、ドル高を牽制する姿勢をより鮮明に打ち出す可能性がある。これによっても円高・ドル安が進行することになりそうだ。

 したがって、来週は株価の軟調推移が想定されるものの、3月期末にかけては、年金運用など各種ファンドの運用成績への意識が高まることもあり“ウィンドウ・ドレッシング”の動きも想定され、3月下旬の3連休明け以降は上昇基調となる可能性がある。

 2月12日の底打ち以降の反転上昇相場のなかで、循環物色による底上げは一巡している。したがって、今後の物色は17年3月期第1四半期(4~6月)の業績好調が想定される銘柄が対象となりそうだ。その象徴として、村田製 <6981> をはじめとする電子部品株に注目している。

 個別銘柄では、用途拡大に伴う需要増加が見込める撮像素子のCMOSセンサーで、圧倒的な強みを持つソニー <6758> 。医療従事者向け情報サイトで、製薬会社の情報提供支援を手掛けるエムスリー <2413> 。電力、ガス会社など大企業向け大規模システムの開発に強み持ち、米企業との提携でセキュリティー分野にも積極進出しているアドソル日進 <3837> [東証2]に注目している。


(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。

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