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【特集】ベネフィット・ワン Research Memo(3):人事データを活用するBPOのワンストップソリューションを提供


 

■会社概要

(1) BPO事業(BtoB)

主力の福利厚生アウトソーシングサービスを利用する企業は2015年9月時点で5,460社を数える。企業では、自社のコア業務に経営リソースを集中し、福利厚生業務などをアウトソーシングする傾向が強まっている。多様化するニーズに、自前の施設や画一的なサービスで応えることが難しく、ES(従業員満足度)向上策として、専門業者への外注(BPO)シフトが加速することが期待される。

ベネフィット・ワン<2412>の戦略は、人事データを基点とするワンストップソリューションのBPO業務を提供することにある。福利厚生、報奨、健康、出張、小口精算、財形持株、給与計算に関するソリューションをクラウドサービスとする。給与計算業務を担う合弁会社「(株)ベネフィットワン・ペイロール」を、2015年8月にパソナグループと設立した。

2015年4月時点において、同社は東証1部上場企業向け福利厚生アウトソーシングサービスでシェアが45.3%、公務団体向けでは46.6%のトップシェアを獲得している。ワンストップサービスは、顧客企業にとって利便性の向上やコスト削減だけでなく、コンプライアンス強化にもつながる。同社にとっては、顧客当たりのサービスと収入の増加が図れる。

顧客ベースの拡大も推進する。大企業に加え、代理店施策の充実やセミナー、ダイレクトメールの活性化などにより中小企業からの新規獲得に注力している。

以下に、同社の各事業の特徴と強みについて紹介する。

a)福利厚生事業
労働力人口の減少、人手不足感の高まり、コア資源への選択と集中が、アウトソーシングニーズの拡大につながるため、BPO事業者には追い風が吹く。人手不足が経営の足かせになりかねず、良い人材の採用と従業員の定着は人事担当者の最重要課題となっている。ES(従業員満足度)の改善に取り組むことで、CS(顧客満足度)の向上を図る企業もある。学生の就職先を決める理由に関する調査では、「福利厚生の充実」が「給与・待遇」より上にランクされている。同社は、多様なメニューを用意することで、顧客企業の従業員一人ひとりのニーズに対応する福利厚生を提供している。同社自身がサービスを提供する事業者ではなく、福利厚生会員とサービス提供事業者の間に位置し、サービスをマッチングするサイトの機能をする。ユーザー課金型サービスのため、常にユーザー側に立った、ユーザーの課題を解決するサービスを提供している。同社が運営委託された宿泊施設においても、施設を所有する会社以外にも宿泊できるようにし、稼働率の向上を図っている。また、オーナー企業の会員社員は、同社の豊富な宿泊施設から選べるようになった。

福利厚生は、単にレクリエーションのための宿泊施設の提供といったことよりも、人によっては育児、健康支援、介護の方が重要度を増している。同社のサービスメニューは、これらを網羅しており、多種多様な福利厚生制度の構築や運用に当たり発生する面倒な事務作業の手間も軽減する。複数拠点で事業を運営する企業にとっては、地域間格差が縮小するメリットがある。中堅・中小企業にとっては、従業員規模にかかわらず、低コストで大企業並みの福利厚生が実現できる。

同社の総合福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」は、下記のように多岐にわたるジャンルのサービスを数多く揃えている。

? リゾート&トラベル(宿泊・ツアー)
? ライフケア(育児・介護・健康管理)
? ライフサポート(冠婚葬祭・住宅・自動車購入・引越)
? スポーツ(フィットネス・ゴルフ・テニス・ダイビング)
? スクール&カルチャー(資格・語学・OAスクール)
? リラクゼーション(マッサージ・エステ)
? ビジネス(研修所・社宅管理)
? レジャー&エンターテイメント(グルメ・遊園地・テーマパーク)
? ファイナンス(ローン・保険・資産運用)

会員料金は、顧客のニーズに合わせて様々なプランを用意している。月会費の負担が少ないスタンダードコース(A)は、300万人超えの会員スケールメリットを活かした特別割引料金で、福利厚生メニューが利用できる。ゴールドコース(B)は、主に宿泊利用時、同社から補助金が補填されることでスタンダードコースよりさらにお得な利用料金となる。育児や介護など、その他のメニューも割安料金で利用できる。スタンダードプラスコース(A+)は、スタンダードコースに5,000円分のポイントがつく。サービス利用時に従業員一人ひとりが自由にポイントを充当できるため、個人のニーズに合わせてよりお得に福利厚生メニューが利用できる。

○カフェテリア型総合福利厚生サービス
従来の「定食型」では利用したいメニューがない、もしくはいつも同じメニューで飽きてしまうという悩みに、同社の「カフェテリア型」は応える。多彩メニューから自由に選ぶことができるため、企業は各従業員の多様なニーズに対応し、高いESが得られる。公平にポイントを付与することで、福利厚生格差も是正できる。また、ポイント設定ルールにより、各社の福利厚生の意向を反映することができる。

b)インセンティブ事業(モチベーション向上支援サービス)
同社は、日本初のインセンティブ専用のポイントプログラムを展開している。同社と契約した企業が、インセンティブ・ポイントを営業職社員や代理店等に付与する。最近では販促インセンティブ目的のみならず、採用強化や離職率削減及び定着率の向上による採用コストの削減、優秀な人材の確保、評価機会の拡大、従業員のモチベーションアップ、営業力の底上げ、キャンペーン効果の引上げなど活用の範囲が広がっている。パート・アルバイト向けの導入メリットは、時給に代わる効果的なモチベーション向上策として、雇用期間の長期化、職場のコミュニケーションの向上などがある。オリジナルなメッセージに込められたサンクスポイントにより、従業員同士のコミュニケーションの活発化に寄与することも可能だ。販売代理店においては付与側・被付与側双方にタックスメリットが生じるため、同社では節税の観点からもインセンティブ・ポイントを訴求している。

導入実績は、2015年12月時点で220社を超えており、80万人以上のモチベーション向上に寄与している。代表的なところでは、携帯電話通信事業者や生損保、自動車販売関係、医薬品会社、外食企業などである。

インセンティブ・ポイントの交換アイテムは、全21カテゴリ、約18,000メニューを揃えている。年齢・性別を問わず、幅広い層のライフタイル・趣味趣向に対応できる。同社のスケールメリットを活かした、お得なアウトレット価格や特典が利用できる。単たる「モノ」だけでなく、ユーザーの心に残るプレミアムな体験ができるサービスも充実している。

c)ヘルスケア事業
ヘルスケア事業は、健診サービスから特定保健指導、データヘルス計画等、健康関連のサービスをワンストップで提供している。事業環境としては、2008年の特定健康診査及び特定保健指導の義務化から始まり、2015年度からデータヘルス計画の義務化、2015年12月からストレスチェックの義務化と続く国策が追風となっている。

背景には高齢化と生活習慣病の増加がある。日本人は生活習慣の変化等により、近年、糖尿病等の生活習慣病の有望者・予備群が増加しており、死因の約3分の1を占めると推計されている。特定健康診査は、メタボリックシンドロームに着目した健診である。特定保健指導は、その診査の結果から発症リスクが高く、生活習慣の改善による予防効果が期待できる人をサポートする。データヘルスは、特定健康診査や診療報酬明細書(レセプト)などから得られるデータの分析に基づいて、効率のよい保健事業を行うことである。厚生労働省は2015年度から、すべての健康保険組合に対しデータを活用した科学的なアプローチにより事業の実効性を高めるデータヘルス計画の作成と実施を義務付けている。また、2015年12月に義務化されるストレスチェックでは、精神的疾患と生活習慣病が別々の問題ではなく関連していることが明らかになってきているため、同社では健診データとストレスチェックを掛け合わせたチェックプログラム(特許出願中)を提供する。政府は、個人や健康保険加入者の予防・健康づくりに向けたインセンティブの強化を進めている。一部での取組みが見られたものの、今後広く普及させるために、健康保険組合への義務化がほぼ既定路線となっている。同社グループは、インセンティブ事業を手掛けているため、得意とするサービスとなろう。

d) BTM事業
同社は、出張が国内旅行の3分の1を占めており、日本のBTM(出張支援サービス)市場規模を6.5兆円と推定している。BTMの利用は、出張にかかる直接経費の削減だけでなく、間接コストの削減やコンプライアンス強化につながる。同社のキャッシュレスで一括管理を可能とする「出張ステーション」は、3つの導入メリットがある。それらは、法人契約の特別割引料金を利用して旅費・宿泊費を削減できる「直接経費の削減」、Web手配(24時間可能)・個人の立替不要・会社一括精算により業務を大幅に削減する「間接経費の削減」、出張データを一元管理・可視化できるため、カラ出張などの不正を防止する「コンプライアンス強化」である。

同社は、交通手配にかかる特定介在旅行会社認定の強みを生かした出張支援システムを保有している。同事業は現時点での収益は小規模なものの、経営者のコンプライアンス意識の高まりと共に需要が急拡大しており、商品力と営業力を強化している。国内ではマージン率の高い出張専用宿泊施設との直接提携を強化することで取扱いを伸ばし、収益性を高める。来年度に向け、これまで手掛けていなかった海外も、航空券・宿泊の手配体制を整える。

e)ペイロール事業
BPO事業強化の一環として、2015年8月に給与計算業務のアウトソーシングサービスを行う新会社ベネフィットワン・ペイロールを設立した。パソナグループが60%、同社が40%を出資する合弁会社となる。新会社は、パソナグループ各社とベネフィットワングループ各社の給与計算と勤怠管理業務を担うシェアードサービス機能を持つとともに、このペイロール機能を外販し、中堅・中小企業73万社をメインターゲットとしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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