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【特集】菊川弘之氏 【原油安とマーケットの行方】 (3) <相場観特集>

菊川弘之氏(日本ユニコム・調査部主席アナリスト)
 原油価格が下落を続けている。10日のニューヨーク原油先物市場で、代表的な指標油種のWTI・1月渡し価格は、5営業日連続で値下がり。1バレル=36ドル台へと下落して、約6年10ヵ月ぶりの安値水準を更新した。原油価格の低迷は資源関連株の下落を招き、日米株式相場の下げを誘発している。そこで、今後の原油価格の見通しについて、第一線の専門家である菊川弘之氏(日本ユニコム・調査部主席アナリスト)の見方を紹介する。

●「反転上昇も43~45ドル水準で戻り売り圧力強い」

菊川弘之氏(日本ユニコム・調査部主席アナリスト)

 12月の石油輸出国機構(OPEC)総会では、6月の総会まで生産目標設定が見送られる異常事態となり、原油市場は大幅続落となった。米原油在庫が過去5年平均を大きく上回り、北米の暖冬予報で供給過剰の長期化が懸念されるなか、WTI価格は、40プラス・マイナス5ドルのレンジに切り下がる流れとなっている。

 原油価格下落は米株価にも影響を与えており、金融市場にリスク回避が高まるなら、30ドル割れもあり得るだろう。来年にはイラン制裁解除からの増産や、米戦略備蓄試験放出、メキシコ湾岸の新プロジェクト始動などマーケットの上値を抑える要因は多く、産油国の供給障害がなければ、1985年OPEC総会以降と同じく、市場シェア獲得競争からの安値低迷相場が、しばらく続きそうだ。

 ただし、投機玉は買い越し減少・売玉が溜まっている状況で、雇用統計後に急反発した金(ゴールド)同様、ショートカバーからの一時的な急伸も想定され、30ドル割れがあっても長続きはしないだろう。

 43~45ドル水準では、戻り売り圧力が強まりそうだが、シリア問題の混迷化に加えて、原油価格下落でサウジの財政問題・王位継承問題など中東の地政学リスクを高める不透明要因も潜在的に多く、シェール企業への投資削減など、安値圏での保ち合いが長ければ長いほど、将来の上値波乱の種は増えていくだろう。また、米大統領選挙での政治的空白期間に地政学リスクが高まる可能性や、ドル高基調に変化の兆しが出ている点にも注意したい。

<プロフィール>
NYU留学後、商品投資顧問・証券会社の調査部・ディーリング部長などを経て現職。日経新聞、時事通信などにマーケットコメント・解説を寄稿。TV・ラジオなど多数メディアに出演中。中国・台湾でも現地取引所主催セミナー講師として講演。

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