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【特集】「鍵の革命」スマートロック 【株経トップ特集】


―将来性に着目、参入増で普及に拍車―

 「スマートロック」への関心が徐々に高まっている。スマートフォンのアプリを利用して玄関ドアの鍵を開け閉めできるほか、インターネットを通じて一時的に他人のスマホに合い鍵を渡すことなどができるデジタルの鍵のことで、アメリカを中心に普及が進むが、国内でもベンチャーを中心に参入が相次いでいる。今後、株式市場でも話題に上ることが増えるとみられ、今から注目しておく必要があるだろう。

●スマホで施錠・開錠

 スマートロックの仕組みは、スマホやタブレットの専用アプリと、玄関の鍵を開け閉めできる機器で構成されており、機器の多くはドアの内側にある鍵のつまみ部分の「サムターン」に取り付けるようになっている。スマホから専用アプリを通して施錠や開錠の指示を出すと、Bluetooth(ブルートゥース)を利用して機器部分と通信し、サムターン部分を開け閉めするようになっている。

 スマートロックのメリットは、鍵をデータ化した「デジタルな鍵」をスマホに保存することで、新たに「金物」の鍵を持ち歩く必要がなくなるという点にある。また、開閉の履歴が確認できたり、インターネットを経由して第三者に渡すことができるなどもある。

 企業にとっても「物件の内覧時に、希望者に鍵のデータを送るだけですぐに開錠できることや、その後は2度と使えなくすることもできるという点にメリットを感じる」(不動産関係者)との声が聞かれるほか、仲介物件などでは内見時に仲介業者が現地に出向く必要がなくなるので、人手やコストの削減につながるとの見方が強い。また、ホテルではフロントでの鍵の受け渡しやチェックイン時の手間を省けるなどの利用が期待されている。

●ネクストは内覧で実証実験

 今後の普及が期待されているスマートロックだが、近年、ベンチャー企業を中心に参入する企業が増えてきたことで、これに拍車がかかりそうだ。

 その代表格であるフォトシンス(東京都品川区)では、今年4月からスマートロック「Akerun」の販売を開始。同時に、三井不 <8801> やユニシス <8056> と組んで、オフィスの入退室をスマートロックで管理し、使用時間に応じて課金するサービスを試験的にスタートさせた。また同社は、NTTドコモ <9437> 子会社のNTTドコモ・ベンチャーズや共立メンテ <9616> 傘下のホテル「ドーミーイン」と、ホテルの鍵をスマートロック化するシステムを共同開発。さらに、不動産情報サイト「HOME'S」を手掛けるネクスト <2120> とは、不動産物件の内見時にスマートロックを活用する「スマート内覧」の実証実験も行った。

●ソニー、KDDIなどベンチャーに出資

 また、ソニー <6758> が米ベンチャーキャピタルのウィルと設立したQrio(キュリオ、東京都港区)では5月、低価格のスマートロック「Qrio Smart Lock」を発売した。これを利用してリクルート <6098> 傘下のリクルート住まいカンパニーでは、今夏から一部の物件の内見時に利用して鍵の受け渡しを不要にしている。

 このほか、KDDI <9433> は、3月にコーポレート・ベンチャー・ファンド「KDDI Open Innovation Fund」を通じて、スマートロックを提供する米オーガスト・ホームへ出資を行ったが、これもスマートロックの将来性を見据えてのことだ。

さらに、これら既にスマートロックに関連したビジネスを開始している銘柄以外にも、住宅用ロックを手掛けるアルファCo <3434> や、自動車用の電子キーを住宅用にも供給している東海理 <6995> も関連銘柄として思惑を呼びそうだ。

●民泊にも活用

 スマートロックはまた、最近の訪日外国人客の増加に伴うホテルベッド不足の解消策として注目される「民泊」や、社会問題化しつつある、空き家・空き部屋に関しても活用が期待されている。

 導入すれば、物理的な鍵をやり取りする必要がなくなるので、貸し手・借り手双方の利便性が高まることになる。空き家の見回りサービスを展開するALSOK <2331> などもスマートロックに関連して注目しておきたい。

情報提供:日刊株式経済新聞

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