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【特集】「検証・インバウンド関連/前編」 【株経トップ特集】


―中国リスク重荷も、中期買い場を提供―

 消費関連セクターの株価は、昨年来、デフレや少子高齢化といったこれまでのネガティブなイメージを払拭し破竹の快進撃をみせるものが相次いだ。しかし足もとは曲がり角に来ている印象を受ける。ここ最近は中国景気の減速懸念が足かせとなり、上値の重さが意識されているが、これは一時的な停滞かそれとも大勢トレンドの転換点を示唆するのか。中国経済の現状にスポットを当てながら、インバウンド関連銘柄の動向を探る。

●訪日客増勢が加速、8月は64%増を達成

 時計やバッグ、指輪、毛皮などの高額商品にとどまらず、レジャー関連消費や化粧品、日用品に至るまで、中国人観光客を中心とした「爆買い」は、消費関連株に対するこれまでのマーケットの概念をポジティブに飛躍させる起爆材料となった。ところが、足もとは勢いに衰えがみられない訪日外客数とは裏腹に、株価動向は精彩を欠くケースが目立つ。

 現在の日本では消費の幅広い分野で、その売り上げを外国人観光客の懐に委ねる部分が大きくなっている。したがって、日本政府観光局(JNTO)から毎月発表される訪日外客数の統計は、株式市場のひとつのイベントにも似た感覚で、インバウンド関連銘柄の株価を刺激する“突っつき棒”としての役割が続いてきた。

 16日、後場取引時間中に発表された8月の訪日客数は前年同月比で63.8%増の181万7000人と、8月として過去最高だった昨年の111万人を70万人強上回った。

 アジア地域の観光客に対するビザの発給要件の緩和や、免税品の対象品目拡大など、成長戦略の一環として安倍政権が推進する「観光立国日本」のシナリオが着実に浸透していることをうかがわせる。加えて、バカンスシーズンに向けた訪日旅行プロモーションも需要喚起にひと役買った。

 しかし、16日の市場の反応は極めて冷ややかだったといってよい。訪日客数発表を受けても、高島屋 <8233> 、三越伊勢丹 <3099> をはじめとする大手百貨店は動意の気配をみせず、資生堂 <4911> 、ビックカメラ <3048> 、マツキヨHD <3088> 、HIS <9603> など名だたる関連銘柄に至っては、この日の安値圏を徘徊する展開に終始した。

 これについて市場では「(訪日客の急増について)事前に織り込みが進んでいたこともあるが、何よりも爆買い訪日客の“本拠地”とみられていた中国景気に対する警戒心が買いを鈍らせている」(ブーケ・ド・フルーレット代表馬渕治好氏)と指摘する。つまり、インバウンド需要は今後中国景気の実態にサヤ寄せするかたちで伸び悩むのではないか、という先行きに対する懸念が買いの矛先を鈍らせている。 【後編に続く】

情報提供:日刊株式経済新聞


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