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【市況】【吉野 豊のマーケット展望】 「日経平均の2万円後を考える」


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SMBC日興証券 株式調査部
チーフテクニカルアナリスト
吉野 豊

●中期的な基調転換が鮮明に、短期的には調整か

 日経平均は、2007年の高値1万8261円(07年7月9日)を上抜いて以降、大きな調整を交えることなく上昇が続き、4月22日には15年振りに2万円を回復した。

 ドルベースの日経平均も2013年末の高値155.03ドル(13年12月30日)を上抜いて以降、休まず上昇が続いて167.9ドル(4月22日)まで上昇波動が拡大。また、ユーロベースの日経平均も157.0ユーロ(4月15日)まで上昇するなど、日本株の中期的な上昇基調の強さが一段と鮮明となっている。

 海外株式も昨年秋以降、原油価格が大幅に下落し、世界的に金利低下基調が強まるなか、先進国、新興国ともに上昇を続けてきた。だが、3~4月の上昇で主要な上値のフシに到達し、頭打ちとなる株価指数が見られ始めている。

 NYダウ工業株は73ヵ月サイクルと1万8350ドル処のフシに対応した3月の高値1万8288ドル(15年3月2日)で頭打ちとなり、その後、足踏みが続いている。昨年秋以降、急騰を続けてきたドイツDAX指数も12,374pt(15年4月10日)への上昇で、主要な上値のフシの一つ1万2430pt処にほぼ到達し、頭打ちとなった。

 新興国では依然、上昇が続いている上海総合指数に過熱感が台頭する一方、2013~14年に大幅上昇が続いたインドSESNSEX30は1月の高値2万9681pt(15年1月29日)で頭打ちとなり、その後、高値を抜けていない。

 一方、WTI原油は98、81ヵ月サイクルと44ドル処のサポートに対応した3月の安値43.46ドル(15年3月17日)で下げ止まり、その後の反発で53.53ドル(2月17日)を上回ったことで、底を打った可能性が高まっている。

 また、米国10年国債利回りも1.646%(15年1月30日)で下げ止まり、2012年のボトム1.39%(12年7月24日)に対する短期二番底を打ち、その後の短期的な底固めが進んでいる。

 今後、原油や金利の反発が拡大するようだと、海外株式は当面の天井を打ち、調整局面へ移行する可能性があろう。米国金利の上昇は基本的にはドル高要因であるが、米国株の調整が拡大するようなら、ドル/円も短期的には軟化する可能性が高い。ドル/円は118円処を下回るようだと、一時的には117円処か112円処まで押し戻される可能性もあろう。

 中期波動が切り上がり、上昇基調が強まっている日経平均は、年後半にはさらに上昇波動が拡大する可能性が高まったとみられる。だが、海外株式や為替の調整が拡大するようだと、日経平均も主要なフシの一つ2万0280円処までで頭打ちとなり、5月後半にかけて短期的には1840円幅か2380円幅程度の調整が生じる可能性があろう。

 だが、日経平均の右肩上がりの基調が崩れる可能性は低く、短期的な調整が一巡した後、年後半には2万2000円処まで上値が切り上がるとみられる。

●物色の主役が交代し始める

 3月27日号の当欄では、年明け以降の日本株市場では新、旧の2つの物色の潮流が混在し、先行きの物色の方向がつかみにくくなっているが、先行して上昇を続けた銘柄が早晩ピークアウトし、主役が交代する公算が大きいだろうと述べた。

 実際、4月半ば以降、こうしたリターン・リバーサル(日本流に述べるなら「天底逆転」)が始まった可能性が高まっている。

 すなわち、過去2~3年上昇が続いた銘柄――たとえば、キッコマン <2801> など食品大手や日新薬 <4516> などの薬品株、ドンキHD <7532> などの専門店、あるいはOLC <4661> など――については、3~4月にかけてさらに上値追いとなった。

 しかし、これらは、2007年の資源バブルの際の資源関連株や2000年のITバブルの際の大手電機株の大相場に匹敵するような急騰を演じてきており、4月の高値で頭打ちとなり、大幅に反落する銘柄が増え始めている。

 一方で、2013年央以降、2年ほどの間、高値を抜けずに調整が続いた銘柄――三菱UFJ <8306> などの銀行株、タカラレーベ <8897> などの不動産株、一休 <2450> などのインターネット関連株や総合化学などの市況関連株など――は、十分な下値固めを経て、2013年の高値を上抜き、ここにきて騰勢が強まり始める銘柄が現れ始めている。

 こうした傾向は今後想定される市場全体の調整を通じて、一層強まるとみられる。年後半の一段の上昇に向けて、銘柄の入れ替えを進めていくことが肝要だろう。

 新生銀 <8303> 、ダイビル <8806> 、熊谷組 <1861> 、鉄建 <1815> 、東急 <9005> 、南海電 <9044> 、ソフトバンク <9984> 、カプコン <9697> 、NEC <6701> 、ラオックス <8202> [東証2]、山九 <9065> 、地方電力株などにも注目したい。

2015年4月23日 記

(「チャートブック週足集」No.2022より巻頭言を改題して転載)

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