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【市況】【鈴木一之の相場展望】 「世界の景気が上向きに」


●ドイツの景気回復を確認

 先週から今週にかけてドイツの経済指標が続けて2つ発表された。これがどちらも良好な内容だった。

 ひとつは2月のZEW景況感指数で、これはエコノミスト、アナリスト、市場関係者など350人にアンケート調査を行ったドイツの経済統計を代表するものである。2月のZEWは53.0で、前月の48.4を+4.6ポイント上回り4ヵ月連続の上昇となった。1年ぶりの水準まで回復している。

 もうひとつはIfo景況感指数で、こちらは大小7000社に及ぶ企業にヒアリングした結果がまとめられている。2月の数値は106.8で、1月の106.7をわずか+0.1ポイントだけだが上回った。これも4ヵ月連続の上昇で6ヵ月ぶりの高水準を記録した。

 ドイツ経済は「4ヵ月連続して景気回復」が数値の上で確認されたが、起点となる4ヵ月前の昨年10月は、世界銀行やIMFが相次いで世界経済の見通しを引き下げた時期である。それらのネガティブな見通しに連動して原油市況が下げ足を速め、前後して株式市場も大幅な調整を余儀なくされた時期に当たる。

 当時、中間選挙を控えていた米国ではドル高を警戒する空気が広がり、FRBも良いドル高(米国経済の好調→米国の長期金利の上昇→ドル高)ではなく、悪いドル高(日欧の景気鈍化→日欧の金融緩和→日欧の通貨下落)を危惧する見解を陰に陽に表明していた。

 折しも西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱が先進国にも広がりを見せ、株式市場は10月17日に日経平均株価が1万4500円台まで下げるきつめの調整に見舞われた。

 この状況から抜け出すには、グローバル経済では日本と欧州の景気回復しかない、という当時としては相当にハードルの高い条件が突きつけられていた時である。

●世界景気に連動する日本経済

 それから4ヵ月が経過して、昨年10月が実はドイツ経済のボトムだったという皮肉な結果が経済指標からは結論として得られたわけである。この間のマーケットは、原油価格の急落がもたらす金融市場のクレジットリスクの再燃にずっと脅やかされていた。

 それと同時にドイツ経済を巡る環境は、ウクライナ東部の軍事的緊張とギリシャでの急進左派連合の躍進など、いくつもの欧州債務危機の火種が芽生えていた状況にあった。

 にもかかわらずドイツ経済は、ZEWとIfoという両景況感指数が示すように、ユーロ安に支えられた企業活動は萎縮することなく、マーケットの警戒的な空気にもひるむことなく、10月をボトムとして活発化したことが示されている。

 同じ頃、世界の長期金利は「質への逃避」の意味合いを濃くしながら一貫して低下が続いたが、それも1月末で大底を打って反転した。その後に訪れたのが現在の世界同時株高である。米国、ドイツ、英国の株価指数がそろって史上最高値を更新し、米国のNASDAQはITバブルと呼ばれる2000年3月の高値にひたひたと迫っている。
 
 日本経済は世界の景気動向に最も連動性が高い。ベータ値の高いのが日本経済の特徴であり、それは日本の株式市場も同様である。ドイツの景況感指数が1年ぶりの水準まで回復したということは、日本経済も再び上向きの力を備えていると見ることができる。おそらくそれは原油価格の下落によってもたらされている。

 原油市況はひとまず目先の底値を確認したようだが、シェールガスに代表されるように供給能力が備わっている以上、かつてのレベルに戻るのは容易ではないだろう。

 原材料価格の低下によって景気の回復がもたらされているのだとすれば、2007年7月の高値を抜いたばかりの日経平均株価はまだ上値余地があると見られる。

 景気動向に敏感な化学商社、機械商社の中から、第一実 <8059> 、稲畑産 <8098> 、長瀬産 <8012> 、ユアサ商 <8074> 、椿本興 <8052> に注目している。

2015年2月26日 記

(「チャートブック週足集」No.2014より転載)
(「株探」編集部)

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