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【特集】<特集> 【 7-9月期決算速報 】


―円安メリットは今後の上振れ要因に―

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大和証券 投資戦略部
守田 誠、佐藤 智穂

●上期は想定通りの好決算

 主要事業会社200社(以下、大和200)のうち、11月12日までに決算を発表した企業は195社(開票率98%)とほぼ出揃った。

 2014年度上期実績は、5%増収、10%経常増益となる見込み。多額の一時損益を計上した3社(住友商 <8053> 、東電 <9501> 、ソフトバンク <9984> )を除くベースでは4%増収、8%経常増益の見込み。

 業績を牽引したのは、米国を中心とした好調な海外消費や需要が旺盛な設備投資関連の分野。業種別では、自動車や機械、電機、精密などの増益幅が大きかった。

●概ねアナリスト予想に沿った内容

 上期決算(多額の一時損益を計上した3社を除く)は、前回集計時点(8月26日)の会社経常利益予想を11%と大きく上振れる好調な内容であった。

 前回大和予想比では4%の上振れとなったが、営業外で計上された為替差益などの影響が大きいと見ている。営業利益では、前回大和予想比1%の未達と、ほぼ同水準の着地であったことから、実勢ベースの企業業績は、概ね前回の大和予想に沿った内容であったと考える。

 業種別の経常利益では、大半の業種が前回大和予想を上回った。うち、営業利益ベースでも実績が大きく上振れした不動産、医薬品、サービス・メディア、機械などが好調な推移となった。

●会社予想は小幅な修正にとどまる

 新たな2014年度の会社予想は、前年度比3%経常増益となる見込み。前回の経常利益予想との比較では、1%の上方修正にとどまっており、上期実績の大幅な上振れは、会社の通期業績予想にほとんど反映されていない状況である。

 上期の経常利益が前回会社予想を5%以上上振れした116社のうち、実際に通期の会社予想を引き上げた企業は55社(上振れ企業の47%)のみ。

 会社予想を引き上げた企業の内訳を見ても、上期実績の上振れ分のみを上方修正したケースが大半であり、下期予想を実質的に上方修正した企業は、上期の上振れ企業の7%にとどまる。

 通期会社予想を据え置いた又は下方修正した企業を合わせ、上期上振れ企業の63%が実質的に下期予想を引き下げている。

●会社予想は保守的な内容

 しかし実際には、好調に推移した上期の収益環境が急速に悪化するような悪材料はほとんど見られず、会社の通期予想は保守的であると考える。

 会社の為替前提も保守的な水準。会社の下期の為替前提は、105円/ドル~107円/ドル、135円/ユーロが大勢を占めており、104円/ドルより円安の期初前提から変更していない企業も相当数残っている。

 足元の為替相場は115円/ドル、143円/ユーロ程度で推移していることから、円安効果は今後の業績の大きな上振れ要因となろう。

●アナリスト予想は上方修正が優勢か

 現在、アナリストは決算後の業績見直しを行っている最中だが、アナリスト予想は、10月以降の為替相場の急速な円安シフトを反映することで、通期の前回大和予想(大和200:2014年度3.7%増収、8.3%経常増益、2015年度2.8%増収、11.0%経常増益)は上方修正される可能性が高いと考える。

 大和では、10月以降の為替前提を110円/ドル、140円/ユーロ(前回100円/ドル、135円/ユーロ)へ変更する予定である。

 なお、ドル、ユーロともに10円円安になった場合の経常利益の押し上げ効果(大和200ベース)は、年間7%程度と試算している。2014年度は、下期のみの影響となるため、影響度は年間の半分程度(3%~4%程度)となると考える。

●自社株買いの動きは続く

 企業の株主還元の姿勢は着実に改善してきている。

 今決算でも比較的規模の大きい購入枠の設定が目立った。4月1日~11月12日までの期間で自社株買いを発表した企業(大和200構成銘柄以外も含む)の取得枠総額は2.3兆円。2013年の同期間の取得枠総額(1.2兆円)に対し、ほぼ倍の水準となった。

 2013年度の自社株買いの実施総額は東証一部ベースで1.9兆円であったことから、2014年度はその倍の4兆円程度、リーマンショック前の2007年度と同水準の実施が期待できよう。

 配当金については、今回決算で会社予想の上方修正は12%にとどまったが、例年、上期決算時に見直されるケースは少ない。下期の企業業績が想定通り順調に推移することで、本決算のタイミングで配当予想を増額の方向で見直す動きが本格化すると考える。

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