【経済】電気自動車や水素自動車はニッチ産業であることを認識すべき
次世代の自動車とされる電気自動車や水素自動車については、技術革新や政府の補助などが話題となり報道やCMが華々しく展開されている。
これらが大きく取り上げられる根本的な背景としては原油等の化石燃料の枯渇懸念やCO2による地球温暖化への対応ということがある。
しかし、シェールガス・オイル革命によってこの次世代への転換は単純な構図ではないことに注意が必要だ。シェール革命は原油等の化石燃料の枯渇への時間的猶予を大幅に伸ばした。これまで及び現在の採取しやすい状態で存在した原油・ガス埋蔵量よりも、この新しい技術によって採取できる原油・ガスの埋蔵量は最低でもその数倍の規模で存在している。世界中に膨大に存在する原油・ガスのうち、これまでは採取しやすいものしか埋蔵量にカウントされていなかったといえる。現在は米国のみで採取されているがやがて世界中で採取されることになるだろう。コスト的には現在の原油価格100ドル前後は十分採算ラインのようだ。中東の地政学的リスクがこれまで以上に高まっているなかでも原油が高騰せず、比較的安定しているのはシェール革命が背景にあると見られる。
ともあれ、シェール革命を踏まえた原油の埋蔵量の試算が正しければ、我々が生きている間に原油が枯渇するような事態はあり得ないということになる。供給に心配がない以上、原油価格が実勢を超えて異常に高騰し続けるということもないだろう(なお、CO2の問題についても地中埋蔵化等の技術革新がみられている)。
つまり、まだまだ相当長い間化石燃料の時代が続くのである。
そうだとすると、電気自動車や水素自動車は同じく長い間メインストリームにはなり得ない。石油で走る自動車には長い歴史とインフラが蓄積されており、これらの技術が信頼性・コストやインフラの点ですぐに追いつくことは想像を絶する技術革新でもない限り不可能である。
自動車技術のメインストリームは依然として石油を使った内燃機関をどこまで効率化できるかにあり、電気自動車や水素自動車はこれからもかなり長い間(ひょっとすると100年単位)ニッチ産業であることをはっきり認識すべきだ。
自動車メーカーや政府の成長戦略において、この点を見誤って同分野に過大な投資を行うのは非常にリスクが高いと思われる。
《YU》
提供:フィスコ