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【経済】「ワンコインタクシー」が国を相手取り訴訟


タクシーの初乗り運賃をめぐり、初乗り500円の「ワンコインタクシー」を営業する「ワンコインドーム」は28日、値上げの強制は憲法が保障する「営業の自由」の侵害で、より重大な損害が出るとして、国を相手取り運賃の変更命令や車両の使用停止命令を出さないよう求める訴訟を大阪地裁に起こした。
4月以降、タクシー業者が公定幅運賃の是非をめぐって訴訟を起こしたのは初めて。
今年1月、過当競争の是正などを目的に「改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法」が施行され、4月から東京23区や大阪など競争の激しい特定地域・準特定地域では、国土交通大臣が指定した運賃の範囲(公定幅運賃)が義務化され、それより安い運賃での営業は認められなくなった。
国土交通省は22日、公定幅運賃に従って是正せず格安運賃で営業を続ける事業者に対して15日以内に是正するよう勧告を始めた。近畿では4府県の23の事業者が勧告を受けた。期限までに勧告に従った届け出がないと運賃の変更命令を出し、従わないと車両の使用停止や事業許可を取り消す。
同社は2004年から初乗り500円で営業しており、4月からも運賃の是正をしなかったため、指導や勧告を受けた。ちなみに大阪府内での中型初乗りの公定幅運賃は660~680円なので、最低でも160円の値上げを求められていることになる。
タクシー業界においては小泉政権下で規制緩和が始まり、2002年に参入規制や台数制限が撤廃された。また、料金も自由化され、新規参入や増車、格安運賃で営業する事業者が増えた。そこで、過度の低価格競争によってタクシー運転手の労働環境が悪化したとして、近年は逆に規制が強化されている。
しかし、運転手の賃金は地域別最低賃金以上であればよく、運賃を上げたからといって事業者が必ずしも運転手の賃金を上げるとは限らない。値上げにより利用者のタクシー離れが加速すれば、運賃は上がっても賃金は上がらないということにもなりかねない。
利用者の利益と運転手の待遇改善を図り、両立させるまでの道のりは険しそうだ。

《YU》

 提供:フィスコ

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