【市況】【杉村富生の短期相場観測】
「消費増税→景気失速を懸念しているが…」
●世界のマーケットは意外に堅調!
厳しい相場展開となっている。年初以来、日本の株式市場は完全に“1人負け”の状態である。
ちなみに、昨年末~今年3月末の主要市場の下落率をみると、日経平均株価が9.0%、TOPIXが7.6%なのに対し、NYダウは0.7%、英FT100は2.2%、ブラジルBOVESPAは2.1%、上海総合指数は3.9%にとどまっている。
さらに、S&P500指数はプラス1.7%、独DAX指数はプラスマイナスゼロ、加トロント総合指数はプラス5.2%、伊MIBはプラス14.4%、インドネシアJCIはプラス11.6%である。おかしいではないか。
●日本市場の弱さが突出!
日本市場の弱さが突出している。マーケットでは世界景気の減速懸念、ウクライナ情勢の緊迫化、中国リスクの存在などを「買えない理由」にしているが、海外市場はまったく気にしていない。株価をみる限りでは…。
やはり、ヘッジファンドなど投機筋がネガティブ・キャンペーンを行って、先物を売りまくっている結果だろう。
彼らはHFT(ハイ・フリークウェンシー・トレーディング)、アルゴリズム取引を駆使、やりたい放題である。アメリカではHFTに規制をかけようとしているのに。
それと、株価不振の背景には日本固有の要因があろう。その第1は日銀の追加の金融緩和の遅れである。いや、これはもともと、市場は4月7~8日の金融政策決定会合には期待していなかったのだが、売り方はこれを売り材料にした。コンピュータは機械的に、「言語」に反応する。
●1997~1998年とは明らかに違う!
第2の要因は消費税率の引き上げ(5%→8%)→景気底割れ説にある。だが、これはあり得ない。売り方の主張である。
再三指摘しているように、政策ミスを連発した1997~1998年とは違う。
当時の橋本政権は消費税率引き上げ(3%→5%)による5兆円の負担増に加え、特別減税の廃止、超緊縮予算の編成(公共投資は4兆円削減)、社会保険料・医療費の値上げなど13兆円もの“増税”を強行した。“逆噴射”といわれる歴史に残る政策ミスである。
それに、金融機関の不良債権処理は道半ばだった。さらに、アジア通貨危機、ロシア・ルーブル危機が重なった。筆者は橋本政権がメガバンクの破綻処理を断行したのは政策ミスだった、と考えている。
●安倍政権、日銀は政策を総動員!
しかし、今回は2月6日に5.5兆円の補正予算を編成するなど、万全の政策対応がとられている。日銀は追加の金融緩和の“手”を残している。
安倍政権は年末に消費税率の再引き上げ(8%→10%)の最終決断のタイミングを控えている。4~6月の景気の落ち込みはやむを得ないにしても7~9月には急浮上に転じさせる必要がある。恐らく、安倍政権、日銀は政策を総動員するだろう。
法人税率の引き下げ(35.64%→25.64%)も話題になろう。これが実現すれば1株利益を15.5%増加させる。単純計算だが、時価総額は70兆円増える。
いずれにせよ、この局面においていたずらに弱気になることはない。安値ゾーンをじっくり拾うのは前沢工業 <6489> 、ランビジネス <8944> など。
順張り銘柄ではバリューHR <6078> [JQ]、DVx <3079> [東証2]、日本テレホン <9425> [JQ]、ディディエス <3782> [東証M]、AGCap <6993> [東証2]などに妙味があろう。
2014年4月9日 記
(「チャートブック日足集」No.1515より転載)
(「株探」編集部)