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ノーベル賞が鳴らす復活の鐘、リチウムイオン電池関連「最強ストック5選」 <株探トップ特集>


―前方にEVの巨大市場が待つ、現実買いステージで株価の居どころを変える銘柄を追う―

 10日の東京株式市場は米中の閣僚級協議を目前に、メディア報道に右往左往する展開となった。前日の米国株市場では、中国が暫定合意に向け前向きな姿勢をみせていることが報じられ、NYダウが180ドルあまり上昇したことで、東京市場でも追い風が意識された。しかし、その後は米中貿易協議を巡るポジティブな報道とネガティブな報道が繰り返され、日経平均株価は方向感の定まらない不安定な展開を強いられた。大引けはプラス圏で着地したが売買代金は2兆円を下回り、値上がり銘柄数を値下がりが大きく上回るなど手控えムードは拭えない。

●流れを変えたノーベル化学賞受賞

 こうしたなか、全体相場に流されず光を放った銘柄群がある。スウェーデン王立アカデミーが9日、2019年のノーベル化学賞を旭化成 <3407> の吉野彰名誉フェローら3氏に授与すると発表、これを受けて旭化成株をはじめ、リチウムイオン電池関連 に物色の矛先が向かった。

 リチウムイオン電池は、充電して繰り返し使用できる蓄電池(2次電池)で、現在実用化されている2次電池の中ではエース的存在。正極材、負極材、セパレーター、電解液の4部材で構成され、正極と負極をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行うメカニズムとなっている。軽量で高電圧・大容量という特長を生かし、スマートフォンやノートパソコンなどの情報関連機器に加え、ハイブリッド車電気自動車(EV)にも基幹部品として搭載される。特に車載用については、EVのマーケットが現在進行形で急速に拡大途上にあるなか需給逼迫の可能性が指摘されている。

●百花繚乱のリチウムイオン電池関連株

 きょうは朝方に旭化成がカイ気配でスタートしたほか、正極材メーカーの田中化学研究所 <4080> [JQ]や2次電池メーカーで自動車向けに高実績を誇る古河電池 <6937> なども寄り付き大口の買いが流入し値がつかない形で始まった。

 このほか2次電池製造のトップメーカーでリチウムイオン電池部門を強化しているジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> や、田中化研と同様に正極材を生産する戸田工業 <4100> 、日本化学産業 <4094> [東証2]、負極材では昭和電工 <4004> や日本カーボン <5302> なども買い優勢となった。更に電解液を手掛けるステラ ケミファ <4109> や関東電化工業 <4047> 、セントラル硝子 <4044> なども買いを呼び込む形でスタートした。

 大手電子部品メーカーでもTDK <6762> や村田製作所 <6981> 、京セラ <6971> などがリチウムイオン電池分野に注力している。パナソニック <6752> についてはトヨタ自動車 <7203> との連携を強め車載用電池の開発を進捗させ、同分野の代名詞的な存在となっている。

●EV向けで壮大なマーケットが形成

 リチウムイオン電池というテーマ自体は数年前から大きく取り上げられてきた有力テーマである半面、既にひと相場を形成してしまった感のある銘柄が多いのも事実だ。市場では「上値に潜在的な売り玉を内包している銘柄も多く、物色人気は一過性で終わる」(国内ネット証券アナリスト)という見方も少なくない。しかし一方で、前向きな意見も聞かれる。東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「スマートフォンや情報家電の高機能化とともに、大きな課題となるのが蓄電技術であり、その点(リチウムイオン電池の)研究開発余地はまだ多く残され、ステージが上がるごとに市場も成長する。特に、EV向けについては自動車という巨大市場がベースにあるだけに今後需要が加速する局面が訪れる。理想買いのピークは既に越えているが、現実買いのステージはこれから来るとみている」としている。

 世界最大の自動車市場である中国では、自動車の普及加速と環境問題の深刻化が表裏一体となっており、環境面への影響を考慮して国家戦略としてEVの普及を推進している。また、欧州でも“脱ガソリン車”の流れが鮮明、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の旗振り役であるフランスでは2040年までにガソリンやディーゼル燃料で走る自動車の販売を全廃する計画であり、これに続く形で英国政府も同様に40年までにガソリン車の全廃を図っていく方針を示している。そして直近、民間企業で話題を提供したのが米アマゾンドットコムで、2040年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする計画を打ち出し、10万台のEVを導入する方針を示している。

●海外ファンド見直し買いの呼び水に

 こうしたグローバルな流れのなか、基幹部品というよりEVの動力源を担うリチウムイオン電池の市場拡大は約束されているといってよい。電池素材で世界的にも抜群の技術とシェアを有する日本企業の成長余地が改めて注目され、今回の吉野氏のノーベル化学賞受賞を契機に関連銘柄には海外ファンドからの買いが流入するケースも考えられる。

 今回は、ここから上値に大きな可能性を秘めた関連有力株として5銘柄を選出した。

●ニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]

 電気絶縁用セパレーターの大手で、コンデンサー用では世界シェア推定60%を超える。リチウムイオン電池用セパレーターで高実績を有している点も注目され、大底圏から立ち上がった時価1300円近辺は絶好の買い場とみられる。20年3月期営業利益は前期比26%増の17億円を見込む。品薄で信用買い残も枯れた状態にあり株式需給面から動き出せば足は速い。

●新日本電工 <5563>

 鉄鋼向け合金鉄のトップメーカーで筆頭株主は日本製鉄 <5401> 。電池材料に傾注するが、リチウム電池正極材料の量産技術を持ち、今後の需要急増で商機が膨らむ可能性が高い。19年12月期業績は低迷し無配見通しにあるが、PBR0.3倍台は売られ過ぎの水準。株価も200円未満と低位で人気素地がある。昨年2月には500円台に位置しており、時価はその3分の1の水準に放置されている。

●FDK <6955> [東証2]

 富士通系電池メーカーでニッケル水素電池が主力だが、車載用2次電池分野での活躍も見込まれる。現行のリチウムイオン電池の次世代品として注目される高電圧・大容量の全固体リチウム電池の開発を富士通研究所と共同で進捗させている。既にSMDタイプの超小型全固体電池の開発に成功している。足もとの業績は低迷しているが、株価は03年以降、ここ17年来の大底圏から立ち上がった矢先で上値余地が大きい。

●安永 <7271>

 エンジン部品メーカーでハイブリッドカー(HV)向けに実績が高く、HV向けリチウムイオン電池の部材も手掛けている。16年11月にはリチウムイオン電池の寿命を12倍に伸ばす新技術を開発しており、現在は試作品の段階から量産化に向けた準備が進んでいるもよう。20年3月期は大幅減益見通しながら、株価的には織り込み済みとみられる。信用買い残の整理が進んでいることもポイント。

●大泉製作所 <6618> [東証M]

 サーミスター利用の車載用温度センサーを主力に展開する。2次電池用温度センサーも手掛けており、EVが普及加速局面を迎えるなか活躍余地が高まっている。今下期(19年10月~20年3月)に自動車業界向けの2次電池用温度センサーが加速する見通しにある。業績も21年3月期は営業2ケタ成長路線に復帰する可能性が高い。5G関連基地局向けでも受注案件を確保、EVと5Gの2大テーマに乗る。

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