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明日の株式相場戦略=異彩高「REIT」から波及する新たな物色対象

 きょう(9日)の東京市場では日経平均が131円安と反落。売買代金は1兆8000億円台にとどまり閑散商状だったが、値上がり銘柄数が1000を超えて値下がり数を上回るなど、個人投資家には向かい風の強い地合いではなかった。

 あすから行われる米中の閣僚級会議の行方に思惑が錯綜している。日替わりで両国対立のバロメーターが上下するようにメディア報道にいいように振り回されているが、いずれにしても予断は許されない状況であることに変わりはない。ただ直近、米国側が中国の少数民族(ウイグル族)弾圧問題を俎上に載せ、中国ハイテク企業に対する新たな禁輸措置を発表したことや、中国の政府高官に対するビザ発給制限の方針を打ち出すなど、“ケンカ上等”の姿勢を示しているところをみると、交渉はうまくまとまりそうにないという印象を受ける。

 仮に10~11日の協議が暗礁に乗り上げたとして、マーケットがどこまで織り込んでいるかは未知数。15日の関税引き上げがそのまま実施される形となれば、これはネガティブ材料には違いないわけで、マーケットはいったん下値を試すと思われるが、率にして5%の関税引き上げが、経済実勢にどのくらいの悪影響を上乗せするかといえば、冷静に考えて株式市場をパニックに陥れるようなインパクトはない。今の状況を考慮して空売り筋がポジションを積み上げているようなら逆に底は浅い。今回の米中協議に対する事前の期待感が低いほど波高も低くなるのは道理だ。もとより週末11日の結果に米中摩擦問題のすべてが乗っかっているわけではない。

 ゲーテいわく「今これ以上骨を折っても無駄だ。薔薇ならば花が咲くだろう」。いい意味での開き直りが必要な時もある。基本的には来週の相場をみてから柔軟に対処するのが正しいスタンスだが、現在の東京市場は全体指数と離れた二層化した個別株相場が繰り広げられていることは認識しておきたい。近視眼的にみるとイベントの度に「売り」か「買い」の2択を迫られているような気分になりがちだが、資金は常に継続的にどこかに流れ込んでいる。

 そうしたなか、REIT指数がまさに鮮烈な上昇トレンドを構築している。時価は2007年以来の高値圏を舞う状況にあるが、特筆されるのは波動の強さ。年初に動意してから一本調子で水準を切り上げ、13週移動平均線をサポートラインとするどころか、ほとんど触れることなく上方カイ離を広げたまま、約9カ月間で30%近いパフォーマンスを達成している。世界的な金融緩和モードのなか、高利回りを追いかける動きが加速したものだが、個別銘柄でいうところの需給相場の様相を呈し、「理外の理」の領域に足を踏み入れつつある。

 以前にも触れたが、REITへの資金流入は元来イールド・ハンティングを根拠としているため、同じ土地絡みだからといって不動産株物色に矛先を向ける呼び水とはなりにくい。しかし改めて俯瞰すると、低金利環境下で恩恵を享受する不動産セクターには、静かに流れ込むように投資マネーがシフトされており、特に中小型株がひしめく不動産再生(流動化)関連に株価水準を切り上げるものが目立っている。

 不動産再生関連で目先、動きのよいものでは明豊エンタープライズ<8927>に着目。低位株ということもあり、やや信用買い残が重いが、きょうのように流動性が高まってくればほとんど気にならない。2017年8月末から18年3月にかけての大相場を記憶している投資家も少なからずいると思われる。今は仕切り直しに向け食指の動く株価水準だ。投資用アパート「ミハス」の貢献で20年7月期は営業3割増益見通しと回復が期待されている。このほか、セオリーに準じて強い銘柄につくのであればコスモスイニシア<8844>や日本エスコン<8892>が要注目となる。また、やや長いスタンスでリターンリバーサルを念頭に置けば、底値圏に位置するGA technologies<3491>やツクルバ<2978>などに妙味が感じられる。

 日程面では、あすは8月の機械受注、9月の企業物価指数、9月のオフィス空室率、9月の貸出・預金動向などが発表される。海外では、米中閣僚級会議が11日までの日程で行われる。9月の米消費者物価指数(CPI)が開示されるほか、ノーベル文学賞も発表される。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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