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決算シーズン序盤の急所、上方修正候補「先回り買い」選りすぐり7銘柄 <株探トップ特集>


―採れたて1Q決算で絞り込んだ対中間期高進捗率銘柄、株高スタート前夜に狙い打ち―

 3月期決算企業の19年4-6月期(第1四半期)決算発表シーズンがスタートした。東京証券取引所の集計によると、4~6月期(第1四半期)決算発表は7月24日から増え始め、前半ピークを迎える31日までに全体の3割強にあたる約780社が発表を終える。8月に入ってからは毎日100社超の決算が発表され、最大のヤマ場となる9日は445社が発表する予定だ。決算発表ラッシュは14日まで続く。今回はこれまでに4~6月期決算を発表した企業の中から、第1四半期実績の中間期計画に対する達成度を表す「対中間期進捗率」が高く、業績上方修正に踏み切ることが期待される銘柄を追った。

●序盤戦最大のサプライズはアドバンテスト

 29日までに4~6月期(第1四半期)決算を発表したのは約230社で、3月期決算企業のおよそ1割が決算を通過した格好だ。ここまでの結果を振り返ると、米中貿易摩擦の影響を受ける中国をはじめとする世界景気の減速が逆風となった電機メーカーや自動車関連など製造業の苦戦が目立つ。一方、働き方改革の進展や業務効率化ニーズといった企業の旺盛なIT投資需要を取り込んだシステム関連では好決算を打ち出す企業が多くなっている。

 こうした中、序盤戦で大きな注目を集めたのは、24日に決算を発表した半導体検査装置大手のアドバンテスト <6857> だ。4~6月期はメモリー需要の低迷が響き、税引き前利益は前年同期比9.6%減の149億4900万円と1~3月期に続く減益となった。ただ、スマートフォン向けなど非メモリー部門の検査装置が会社予想を上回ったことや足もとの受注底入れがサプライズ材料となり、米半導体関連株に追随する形で年初来高値にあった株価はストップ高に買われ、約11年10ヵ月ぶりの高値圏に急浮上した。

 アドバンテストは期初段階で通期業績予想を控え目に算出する傾向が強く、毎年のように期中に上方修正を発表している。企業の業績予想には“クセ”があり、上方修正する企業は毎年同じ時期に繰り返すケースが多い。アドバンテストは今期も第1四半期実績だけで通期計画の4割以上をカバーしており、上方修正する公算は大きいとみられる。今回はアドバンテストと同じく、期初予想が保守的で上方修正が期待できる企業に注目した。

 以下では、4~6月期(第1四半期)経常利益の中間期計画に対する進捗率が高く、かつ同進捗率が過去5年間の平均値を10ポイント超上回っている7社を“上方修正先回り候補”として選び出し、中間期計画に対する進捗率の高い順に紹介していく。

●SEHIは4年連続で上方修正した実績を持つ

 選出した銘柄のうち、中間期計画に対する進捗率が最も高いのはSEホールディングス・アンド・インキュベーションズ <9478> [JQ]。26日に発表した20年3月期第1四半期(4-6月)の経常利益は前年実績を2倍も上回る1億3100万円に急拡大し、中間期計画である9000万円を大幅に上回って着地。専門書などの販売やWebメディア、電子書籍販売の好調が継続した主力の出版事業が収益を牽引した。同社は過去4年連続で中間期の経常利益予想を上方修正した実績があり、今期も上方修正は必至とみられる。

●エンプラスは1Q実績だけで中間期計画にほぼ到達

 精密プラスチックメーカー大手のエンプラス <6961> は19日に決算を発表。第1四半期(4-6月)は半導体機器事業でICテスト用ソケットが米国や中華圏で販売が好調だったほか、欧州では車載用途の受注も伸びた。また、オプト事業の構造改革による固定費削減も寄与し、営業利益は前年同期比2ケタ増益を達成した。為替差損益が悪化したことで経常利益は13.2%減の7億9800万円となったが、中間期計画(8億円)にほぼ到達しており、業績上振れは濃厚だ。

●JCRファーマは前期の再現となるか

 続いて紹介するのは希少疾病分野を中心に独自の細胞治療や再生医療技術を活用したバイオ医薬品メーカーのJCRファーマ <4552> 。25日に発表した第1四半期(4-6月)業績は主力の成長ホルモン製剤などの販売が伸び、売上高は2ケタ増加したものの、利益面では研究開発費の増大が響き、経常利益は前年同期比18.6%減の4億6700万円に落ち込んだ。ただ、第1四半期実績の対中間期進捗率は74.1%に達し、過去5年平均の35%を大きく上回った。また、前期も第1四半期は減益だったが、第2四半期に巻き返し、中間期予想を大幅上方修正した実績があり、上方修正候補としてマークしておきたい。

●栄研化は海外販売好調で進捗率70%超え

 臨床検査薬大手の栄研化学 <4549> は24日に決算を発表。第1四半期(4-6月)の経常利益は前年同期比14.2%増の15億1400万円だった。大腸がん検査などで使う主力の便潜血検査用試薬や尿検査用試薬・装置の販売が海外で増加したことに加え、販管費を抑制したことも利益拡大を後押しした。第1四半期経常利益の中間期計画(20億7000万円)に対する進捗率は73.1%と高水準で、業績が上振れする確度は高いとみられる。

●エスティックは高進捗と自社株買いで上値余地広がる

 エスティック <6161> [東証2]が26日に発表した第1四半期(4-6月)業績は国内を中心に自動車用ネジ締め工具のハンドナットランナーやネジ締め付け装置の販売が好調で、売上高が前年同期比25.6%増の21億500万円、経常利益が同63.4%増の6億4200万円といずれも大きく伸びた。経常利益の中間期計画(10億円)に対する進捗率は64.1%に達するうえ、前期も上方修正した履歴があり、今期も期待がもてそうだ。決算と同時に発行済み株式数の8.84%にあたる26万株(金額で13億6968万円)を上限に自社株TOB(株式公開買い付け)を実施すると発表しており、株主還元の切り口でも魅力が高い。

●日新電は中間期上方修正の“常連”

 日新電機 <6641> が24日に発表した第1四半期(4-6月)の経常利益は前年同期の7200万円から11億1200万円に急拡大して着地。前期に不調だった高精細フラットパネルディスプレー製造用イオン注入装置の受注が回復したほか、国内企業や中国・台湾の電力会社向けに電力機器の販売が伸びた。また、製品採算の改善や原価低減を進めたことも大幅増益に貢献した。第1四半期実績の中間期計画(20億円)に対する進捗率は55.6%に達し、過去5年平均の27%を大幅に上回っている。業績予想の修正履歴を見ると、直近5年間で4回も10月後半に中間期予想を上方修正した実績を持っており、今期も期待値は大きい。

●ネットワンは利益率向上で4割増益の好スタート

 最後に紹介するのはネットワーク構築大手のネットワンシステムズ <7518> 。25日に発表した第1四半期(4-6月)の経常利益は前年同期比44.6%増の22億1600万円に膨らんだ。セキュリティー対策やクラウド基盤のシステム構築が公共向け、企業向けともに伸びたことに加え、好採算のサービス比率が上昇したことも利益を押し上げた。中間期計画の52億円に対する進捗率は42.6%と5割に満たないが、4~6月期は収益が上がりにくい時期であり、実質的な進捗率は高いと言える。また、昨年まで2年連続で中間期の経常利益予想を上方修正していることも要注目だ。

◇4~6月期決算序盤戦の上方修正「先回り」候補7社

          ┌ 対中間期進捗率 ┐┌─ 経常利益 ─┐
コード 銘柄名    4-6月期  5年平均 4-6月期 中間期計画
<9478> SEHI     146   36.7   131     90
<6961> エンプラス    99.8   50.5   798     800
<4552> JCRファ    74.1   35.0   467     630
<4549> 栄研化      73.1   46.6   1514    2070
<6161> エスティック   64.1   48.0   642    1001
<6641> 日新電      55.6   27.0   1112    2000
<7518> ネットワン    42.6   23.7   2216    5200

※「対中間期進捗率」は4~6月期経常利益の中間期計画に対する達成度。経常利益の単位は百万円。

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