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馬渕治好氏【相場観特別編・日経平均株価、ずばり19年相場はこう動く】(1) <相場観特集>


―アルゴ売買で不安定な相場、中長期トレンドの急所は―

 東京株式市場は大発会に波乱のスタートとなったが、週をまたいで新春相場2回目の取引となった7日、日経平均株価は一時700円強の上昇と急反発に転じ、2万円大台を回復した。米中貿易摩擦の行方や米金融政策の動向、世界経済の先行きなど不透明要因が強く意識されるなか、株価のボラティリティの高さは相変わらずで、アルゴリズム売買の影響もあって上下に翻弄される展開が続いている。しかし、年間を通じた中長期トレンドがどちらの方向を向いているのかは投資家として、ぜひとも押さえておきたいところだ。相場の先読みで定評のあるベテラン市場関係者に2019年相場の見通しを聞いた。

●「1万6000円が下値メド、年後半は上昇へ」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 2019年相場は年前半に厳しい展開を余儀なくされる公算が大きい。結論を先にすれば年央にかけて下値模索の値動きとなり、日経平均1万6000円をメドとする弱気相場の色を強めそうだ。

 米国経済についてはリセッション懸念が現実化する可能性が高まった。リセッションの定義は実質GDPが前期比で2期連続マイナスに落ち込むことだが、19年中に起こるとみている。法人税減税の反動や連銀の利上げスタンス継続、トランプ政権の関税引き上げによる家計や企業のコスト負担増加。これに加えて中古住宅価格の下落やIT・AI化進展を背景とした労働力のコモディティ化、企業の金利コスト上昇に伴う弊害などが覆いかぶさる。米国経済が悪化した場合は、日本もその影響を免れず、日経平均の下落リスクにつながっていく。

 また、外国為替市場ではドル売りの流れが強まることで、円高に振れやすいことも東京市場にとってはダブルパンチとなり得る。経済状況によっては消費税引き上げが凍結される可能性もあり、その場合はポジティブサプライズとなるが、現時点では(経済の諸指標などから)それを期待する段階にはない。

 ただし、全体株価はアルゴリズム売買などの影響で値動きは大きくても、トレンドとして一方通行に下げ続けるというようなことはなく、1万6000円台近辺では下値抵抗力を発揮する公算が大きいとみている。東証1部ではPBR1倍割れに陥ったことが過去に何度かあるが、ここ10年を振り返れば、09年3月初旬のリーマン・ショック後で0.81倍。また、安倍政権発足前の民主党政権時代だった12年6月に0.87倍まで下がった。この時のPBR水準を現在に当てはめると、前者は1万5700円、後者は1万6800円となる。株価は需給関係で上にも下にも行き過ぎることが多いが、経済ファンダメンタルズを考慮した場合、これらの過去のデータは意識されそうだ。

 一方、年後半の東京市場は再浮上に向かうとみている。上値メドとしては2万4000円前後を想定する。消費増税は株価にネガティブ要因であることは間違いないとはいえ、景気への悪影響に対する懸念を年前半に前倒しで織り込むことが予想される。昨年10月2日に2万4270円(終値ベース)の高値をつけており、当時の高揚感を考えれば、この水準を19年の内に抜き去ることは困難を要すると思われるが、それでも年央を境にマーケットは次第に明るさを取り戻していくだろう。

 米トランプ政権は既にレームダック化の方向をたどっているが、ワシントンの政治ウォッチャー筋に意見を聞いたところでは、民主党はトランプ政権を弾劾に追い込むつもりはなく、20年の大統領選を勝ちに行くスタンスという。必然的にFRBの金融政策に投資家の視線が向くことになるが、FRBは年後半にはハト派的な動きを強めるとみられる。円高への警戒は残るものの、米国株市場が上値指向を取り戻し、つれて世界の主要国の株価も持ち直す流れとなり、東京市場にも相対的な出遅れ感から買い戻しの動きが本格化するとみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。


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