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夏のトランプ・ラリー【フィスコ・コラム】


米中貿易戦争への懸念は完全には払しょくされず、しかもその騒動を引き起こした国の通貨が上昇する奇妙な現象が外為市場で起こっています。ドル・円は半年ぶりの高値圏に浮揚していますが、足元のドル高と日本の記録的な猛暑のどちらが先に終わるでしょうか。

アメリカのトランプ政権は7月6日、中国からの輸入製品の一部に制裁関税を発動した後、さらに2000億ドル規模の輸入関税を9月以降に追加する方針です。中国側は報復措置を講じ、米中対立の深刻化で警戒の円買いが優勢になる・・・との市場予想に反し、足元はドル買いに振れています。懸念は残るものの、追加制裁まで時間があり、とりあえず緊張は緩和されたというのが市場の見立てです。

流れがドル買いに傾くなか、ドル・円は11日に5月高値の111円39銭を上抜けたことで上昇基調が鮮明となり、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)の議会証言で、好調な国内経済を背景に引き締め継続の方針が示されると、半年ぶりに113円を一時回復。1月8日に付けた今年最高値113円38銭が射程圏内に入ってきました。ただ、足元のドル買いはいつまで続くでしょうか。

ドル・円の日足のチャートをみると、2017年は下落局面となっても108円台で何度もサポートされ、再浮上しています。一方で、上昇局面では114円半ばが抵抗線としてドルの上昇を阻止するケースが目立ちました。今年最高値更新後のドルは、この水準を目指すでしょう。そして、その水準も上抜けたら、2016年11月の「トランプ・ラリー」で記録した同年12月の118円66銭がゴールになるかもしれません。

反面、足元のドル・円は、上値の重さも意識されています。ドル選好地合いのため主要通貨が弱含むと、その影響でクロス円が値を下げドル・円をやや圧迫しているためです。また、上昇ペースが速いとの見方から利益確定売りが上昇を抑えています。それと、やはりトランプ政権の保護主義的な通商政策で景気腰折れとなれば利上げシナリオの修正につながりかねず、ドル買いには慎重になっているようです。

18日に発表されたアメリカの「ベージュブック」でも、12地区連銀は製造業者からトランプ政権の関税措置について、価格上昇や供給阻害による懸念が強まっていると報告されています。ただ、このままドル高が続くと仮定すれば、供給者側は相対的な輸入価格の下落によって関税分を上乗せしなくてもよくなり、消費への影響は及ばないとの視点もあります。

トランプ政策は貿易赤字是正などからドル安を前提としているように考えられていますが、今年1月のドル安局面でトランプ大統領はドルに関し「ますます強くなる」とし、最終的に強いドルを望むと述べています。最近のテレビとのインタビューではドル高を望ましくないとけん制しており、為替に関する発言の真意は測りにくいものの、ドルは急落後に値を戻しています。

市場関係者の次の関心は、来月23-25日にワイオミング州ジャクソンホールで開かれる恒例の経済シンポジウムではないでしょうか。日本の猛暑はそれまでには収束に向かうかもしれませんが、同シンポジウムでFRB当局者がタカ派寄りの見解を示せばドル買いは続く可能性もあります。


(吉池 威)

《SK》

 提供:フィスコ

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