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【フィスコ・コラム】「平成」最後の衆議院選挙か


安倍晋三首相が衆院解散の意向を表明し、事実上の選挙戦に突入しました。天皇陛下の退位時期が来年末前後とみられ、次期政権がよほどの短命でない限り、今回が平成最後の衆院選となる公算です。


「欽ちゃん」の愛称で親しまれるコメディアンの萩本欽一さんは最近、通信社とのインタビューで「平成とはどんな時代か」と問われ、「人間が、みんな得しようとしている風潮を感じますね」と答えています。誰もが自分の利益を追求することにこだわり、大局を見失っている、と筆者には読めました。確かに、解散・総選挙をめぐる政治家の動きなども、世のため人のための行動には到底見えず、「なんでそうなるの?」と尋ねたくなります。


例えば、安倍首相は7月の東京都議会選での記録的な惨敗を受け、8月に内閣改造に踏み切りました。新聞の見出しになるよう「仕事師内閣」と自ら名付けたところをみると、新内閣で外交や内政の山積した諸課題に取り組むはずでした。しかし、政権維持という究極の「得」をしたい首相が、加計学園問題など自身に向けられた疑惑を封じるため、野党の準備不足を狙って解散を仕掛けても、何の不思議はありません。


野党にしても似たようなものです。自民党に代わり受け皿となる新たな政党を作るといって民進党などから飛び出す議員が続出しましたが、それこそ自民党を利するコメディではありませんか。確たる政治信条など持たなくても、リーダー格の東京都知事に吹いた風に便乗すれば当選できる、などと考える政治家は不要です。

今回の選挙は、「投票したい政党がない」と言って棄権する有権者がこれまで以上に増えるでしょう。投票率をみると、平成初となった1990年2月の総選挙は73%でしたが、2014年12月の前回は過去最低の52%まで落ち込み、今回は節目の50%を割り込むかもしれません。平成に入って2度下野した自民党は、単独では先の都議会選で見たように弱体化が明白ですが、公明党の組織票に支えられた自公では現有勢力をほぼ維持するとみられます。


株式市場は、早くも与党圧勝シナリオで円安・株高を織り込み始めています。平成の終えんとほぼ同じタイミングで任期切れを迎えるはずの黒田東彦総裁は、達成不能の物価2%上昇目標に向け、なお緩和政策を続けるでしょう。それでも、平成元年の大納会で付けた日経平均株価の過去最高値38957円(ザラ場)を平成時代に再び塗りかえる可能性はゼロです。市場を歪めている日銀に不信感を募らせる市場関係者は少なくありません。


安倍首相が国会で野党議員に「熟読した方がいい」と薦めた新聞によると、来年9月の自民党総裁選で同首相の3選を望む人は多数派ではないとされています。しかし、今回の選挙に勝って国政選挙5連勝の圧倒的な実績を掲げれば、他の候補者に勝ち目はありません。平成時代の申し子ともいえる人気歌手、安室奈美恵さんの潔い引退は時代の終幕を感じさせますが、安倍政権は時代をまたいで続くことになります。そういう選挙です。

「吉池 威」

《MT》

 提供:フィスコ

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