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桂畑誠治氏【上昇軌道“完全復帰”いつ? 漂い始めた割安感】(1) <相場観特集>


―日経平均PERに値ごろ感、バリュエーションからは上値余地―

 22日の東京株式市場は、前週末の米国株市場が強調展開をみせたことを受け買いが優勢だった。しかし、トランプ米大統領の“ロシアゲート疑惑”に対する不透明感や、挑発を繰り返す北朝鮮など地政学リスクが重荷となり、相場全般は気迷いムードも拭いきれない状況だ。ここまで「セル・イン・メイ」を想起させるような展開とはなっていないが、先高期待も盛り上がらない5月相場。ここからの展望について、第一線で活躍する市場関係者の意見を聞いた。

●「日経平均は調整を交えながらも上値指向を継続」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 トランプ米大統領のロシアゲート疑惑についてはすぐに結論が出る類いのものではなく、ここから紆余曲折があるだろう。トランプ氏が掲げていた大規模な経済政策の早期実行にも疑問符がつく状況だが、これはむしろ景気を刺激し過ぎないことで強健な米国経済を長続きさせる可能性があり、一概にネガティブとも言い切れない。

 トランプ氏の弾劾については、共和党の賛成も必要となることから現時点での可能性は薄いといえる。今月30日以降にコミー前FBI長官の議会証言が行われる見通しにあるが、同疑惑に対する新たな材料が浮上して万が一弾劾が成立したとしても、米国株の大勢トレンドを揺るがすには至らないだろう。超保守派のペンス副大統領が大統領に昇格しても、政策運営が円滑になることはないものの、経済にとってマイナス面も少ない。仮にショック安があれば一時的なもので、そこは拾い場となり得るだろう。

 北朝鮮を巡る地政学リスクも、もし核実験を実際に行った場合は緊張が一気に高まるが、今までの延長でミサイルの試射であれば、リスクオフの流れが一気に強まることもなさそうだ。この有事リスクとは常に背中合わせではあるが、株式市場は共存しながら戻りトレンドを維持することが可能とみている。

 今週のスケジュールでは、まず25日のOPEC総会が注目されているが減産の方向でコンセンサスが固まっており、原油市況は強含みで推移することが予想され、これは株式市場にもポジティブに働こう。また、26~27日に行われるG7サミットは対中や対ロシアでまとまる感じはしない。ただ、マーケットはこのG7に大きな期待は寄せておらず、全般相場に下値リスクをもたらすようなことにはならないだろう。6月2日の米5月の雇用統計は強めの数字が予想され、6月13~14日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げが濃厚。相場はこれを既に織り込んでいるとしても、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見で債券の再投資停止によるFRBのバランスシート調整が俎上に載ることも想定されるだけに、その点は注意が必要だと考えている。

 日経平均株価は下値があっても1万9000円台を割り込む公算は小さく、上値は調整を交えながら、2015年6月の高値2万952円を秋口までにチャレンジする展開が有力とみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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