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<トップインタビュー> ディップ 冨田英揮代表取締役社長に聞く


―時価総額67倍に大変貌! 人材サービス成長の秘訣とは―

 求人サイト大手のディップ <2379> の業績が好調だ。人材ニーズの高まりを背景に今17年2月期は営業利益が前期比23%増の88億円を計画、市場では来18年2月期も成長路線を邁進するとの見方が強い。同社の成長の根源にあるものは果たして何なのか。冨田英揮代表取締役社長に聞いた。

●御社の時価総額の変貌率は物凄いものがあります。今年10月以降の株価は調整局面に入っているとはいえ、7月下旬の時点では上場来高値3350円まで買われました。2013年の春先には株式分割を考慮した時価換算ベースで50円前後でしたから、約3年半でなんと67倍になった計算です。もちろん収益成長あっての株価の変貌ですが、その背景について知りたい投資家は多いと思われます。

 まず、御社の主力であるアルバイト求人情報サイト「バイトル」を始めたきっかけは何でしょうか。また、驚異的な成長の秘訣について教えてください

冨田 「バイトル」を始める前に、派遣社員の求人情報サイト「はたらこねっと」を運営していましたが、派遣社員とアルバイトの求人情報をサイトごとに分けたのが14年前。当時、格闘技イベントの、コーナーポスト広告への出稿をご提案いただき、このタイミングでアルバイトのサイトを作ろうと考えました。実は、バイトとバトルを掛けて「バイトル」という名前にしたという経緯があります。

 また、企業として成長していくためには「人」が重要だと考えています。そこで、上場したときに集めた資金で何をしたかというと、大勢の人を採用しました。社員数が200人しかいないときに新卒を200人採用するというような、かなり大胆なかたちで人材を集め、社員教育に注力し、従業員満足度の向上に取り組み離職率を大きく下げながら地道に一歩一歩築き上げてきた、という感じです。

 そうした努力の結果、損益分岐点を超えてからは、順調に成長軌道に乗り、ビジネスモデル上の利益率の高さが、収益の飛躍的な伸びに反映されてきました。

●今期も上期時点で約3割近い売上高の伸びと、営業利益で5割近い成長をみせています。やはりこれも御社の「人」を重視した経営戦略が功を奏しているということなのでしょうか?

冨田 売上高はある意味、営業員の数に比例するものです。リーマン・ショックの時に人材業界のマーケット規模は一気に3分の1になってしまいました。当時はこの業界も厳しいリストラを余儀なくされたのですが、当社はリストラを行いませんでした。その判断が、リーマン・ショックの影響が一巡した後の経済回復時に生きたと思っています。育てた人材がそのまま活躍してくれて業績拡大というかたちで結実したのです。(積極的に人材を採用する方針から)昨年は300人を採用、今年は350人を採用しました。

 売上高は基本的に人の数に連動しますが、一方で情報掲載数はコントロールができます。特に大手クライアントとの契約ではそれが可能となります。戦略的に今上半期はその掲載数を増やしました。一見すると単価が安くなっているようにも見えますが、これは営業員の売り上げ(取引金額)が落ちているわけではありません。

●企業の人材需要が旺盛である背景は、やはり景気が良好であるということなのでしょうか。雇う側では飲食店などの人手不足が際立っているようですが、(職を)求める側ではどういったところのニーズが高いのでしょう。また、企業側が非正規社員から正規社員を増やす方向にあるという点についてはどう見ていますか?

冨田 人材需要が旺盛なのは、景気が回復しているということも確かにあるでしょうが、(飲食店など)やはり構造的に人が足りないということが挙げられると思います。また、求める側の立場に立つと、時給が高い職種は人気があり、時給を上げることが人材を採用しやすくすることは確かでしょう。非正規社員から正規社員を増やす動きが出ているのは、アルバイトでは人を確保しにくいがゆえにそうした流れが来ているのだと思います。当社も「バイトルNEXT」というサイトへのニーズが急速に増加しています。ただ、正規社員化への動きが出る一方で、アルバイトなど非正規社員の市場も拡大しており、正規社員に需要がシフトしているということではないようです。

●求人サイトとして抜群の認知度や利益率を誇る背景には、御社独自の強みがあると思うのですが、それを支える具体的な企画やノウハウがあれば教えてください

冨田 全体の収益規模、つまり母数が増えると成長率は必然的に鈍化しますが、逆に母数が増えると、展開力も増し利益率を上げていくことが可能になります。積極的に採用した新卒営業員は、初年度はゼロからのスタートとなりますが、ポテンシャルが高い人材を採用していることで2年目、3年目で(飛躍的に伸びて)全体業績に大きく貢献してくれています。

 また、広告展開についても工夫をこらし、「バイトル」では、「バイトAKB」といった企画や、直近ではメンバーの卒業発表をCMに絡めるなどの企画を打ち出しています。時流を敏感にとらえ、今回、ピコ太郎さんのCMキャラクター採用についても早い段階から動いていました。

 求人情報サイトのノウハウでは、「バイトル」の約15万件ある案件のうち約8割には職場紹介動画が掲載されていて、これを強みとしています。動画も訴求力の高いものを載せるには営業員のスキルが大切ですし、努力の積み重ねによる部分も大きいです。当社では動画掲載に注力をし始めてから約6年になりますが、それだけの年月をかけてクオリティーを高めてきたという自負があります。

●アルバイト求人情報サイトの「バイトル」以外では、派遣社員求人情報サイトの「はたらこねっと」や看護師の転職を支援する「ナースではたらこ」なども運営されていますが、これらのサイトやサービスについてはどのような位置づけをされていますか?

冨田 ここ数年でみれば、「はたらこねっと」は成長率という点では、派遣会社の人材不足を背景に、母数の大きいバイトルよりも高くなっています。また、「ナースではたらこ」については、もともとリーマン・ショックの時に、景気が悪くてもマーケットが萎まない業界を対象に考えて立ち上げた経緯があります。「バイトル」が主力であることは変わりませんが、いずれのサービスも需要の裾野の広がりに対応するかたちで、今後も着実に続けていければというように考えています。

(聞き手・中村潤一)

●冨田英揮(とみた・ひでき)
ディップ代表取締役社長兼CEO。1997年3月にディップ株式会社を設立。
2000年より派遣求人サイト「はたらこねっと」、2002年よりアルバイト求人情報サイト「バイトル」を開始。Dream・Idea・Passionで社会を改善する存在となることを理念として掲げ、クライアント・ユーザー双方に質の高い求人情報サービスを提供。

●ディップ株式会社

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